桐生祥秀が挑む2年目の9秒台との戦い
昨年の快走で突如沸き上がって桐生を取り巻いた9秒台への期待の喧騒は、今年も続いている。できれば勢いに乗っているうちに一気に9秒台突入を果たしておきたいところだが、本人はそれを「まだ大学1年になったばかりなので……。これから2年、3年、4年と力をつけていけばと考えているので、そんなに急ぐ必要はないと思う」と冷静に捕らえている。 「去年あれだけ多くのレースを走ってもケガをしなかったのに、今年は最初のレースでケガをしているので。体のバランスが崩れている部分もあると思うから、それを今やって強くなるかはわからないけど、力がグンと伸びるキッカケになった高校1年荷解きにやった基礎の練習を、もう一度やってみたいと思っています。それに土江寛裕コーチの提示してくれる新しいものを加えていければ、という楽しみもあるますから」。 こう言って笑顔を見せる桐生が、レースでは高校時代と同じように、記録では無く勝負の方を意識したいとも言う。決勝で勝負した結果を記録につなげる。それがのがベストな道だと。その追求していくことで結果的に、6年後の東京五輪で決勝進出を果たすまでになっていたいと。それが桐生の今の目標でもある。だからこそライバルの山縣亮太もそうだが、9秒台はあくまで通過点でしかないという意識は強いのだ。世界で勝負して決勝進出を果たす為に必要不可欠なものが9秒台。まずはそこに入り込むためにも、10秒0台を安定して出せるようになることが今必要なことだと捕らえているのだ。 桐生はレース後、「走っている時はガトリン選手にもそんなに離されている気はしなかったけど、終わってみてその差が大きかったのを知りました」と話していた。その感想は、世界のトップ選手にも萎縮しない気持の強さを感じさせるものでもある。そんな度胸の良さは必要不可欠なものだが、その反面では自分とトップとの今の力の差をしっかりと認識することも必要だろう。タイムの比較だけでは計りきれない差を縮めようと努力することこそ、世界と戦う為に必要なものだからだ。その多面も国内に止まるのではなく、数多くの国際レースの経験も必要なのだ。