野口飛行士がJAXAで会見(全文1)3回目の宇宙へ「二度あることは三度ある」
今回のミッション、3つのキーワード「可能性」「転換点」「2020年」
野口:はい、分かりました。皆さん、こんには。JAXA宇宙飛行士の野口聡一です。このたびJAXAより国際宇宙ステーション、第62次、63次の長期滞在クルーに任命いただきました。ご尽力いただきました皆さんにあらためて感謝申し上げます。二度あることは三度あると申しますが、過去2回の経験を踏まえてもう一度、宇宙に行きたいなと思っていたところで、このような形で三度目の機会を与えていただき、非常にうれしく思っております。油井飛行士、大西飛行士、そして来月に宇宙への初挑戦を控えている金井飛行士と、新世代の飛行士たちが素晴らしい活躍をする中で、逆に私も非常に刺激を受けまして、彼らの活躍を踏まえた上で、彼らから、〓新人 00:07:04〓たちから助けを受けると。リレーは4人でやるものですから、金井さんに続いて第4ランナーとして、最終ランナーとしてこの2010年代の日本の有人宇宙飛行を最後まで駆け抜けていきたいなという気持ちです。 今回のミッション、拝命に当たりまして、ポイントとしては私、キーワード3つあると思っています。1つ目は可能性ということですね。可能性。で、宇宙への行く手段、往還の手段として過去10年間、われわれはロシアのソユーズを利用してきました。非常に信頼性の高い、われわれにとっては10年前はまったくの初物でしたけども、非常になじみのある機体になりましたけれども、そこからアメリカが今、総力を挙げて開発している新世代の宇宙飛行船に搭乗できる可能性があるということが私にとって非常にモチベーションでもあり、うれしいことでもあります。 というのは、過去2回の飛行を振り返ってみますと、1回目のスペースシャトルは1970年代の開発で、私はスペースシャトルを見て育った世代ですので、ある意味であこがれの機体だったわけですね。ソユーズにいたっては、もう、ガガーリンさんの時代からそれほど変わっていないというか、60年代からずっと引き継いできたロシアの面々たる有人飛行の、1960年代からの設計を引きずってきているものであると。 それに代わって今回、もし登場することになれば、アメリカの新型民間宇宙船っていうのは、スペースXであれボーイングであれ、新しい世紀に入ってからの設計であると。いわば、われわれ自身の世代が作り上げる宇宙船になるということで、まさに宇宙ビジネスの、民間宇宙ビジネスの拡大の契機になり、あるいは地球低軌道から月面、火星へと続いていく、有人宇宙探査のきっかけになるというような意味で、さまざまな可能性を秘めたミッションになるということを期待しております。 可能性があるということは逆に決まっていないことも多いわけで、現時点で搭乗する時点で乗る宇宙船が決まっていない宇宙飛行士は久しぶりだと思うんですけど(笑)。ですから、何に乗るか分からないけど、逆に言うと、それだけ可能性とそれに伴う危険性とを含めた上で、われわれは新しい地図を歩んでいくんだという気持ちで、現在は当たっております。 2つ目のキーワードは、転換点ということですね。転換点に当たる。これはソユーズから新しい民間宇宙船への転換点という意味では、有人宇宙飛行の大きな変わり目になるであろうと。で、前回の2009年のフライトでは、先ほど上垣内ユニット長からご紹介いただいたとおり、日本人にとって初めてのソユーズということで、それまで日本人はずっとスペースシャトルのお世話になってきて、私のときからソユーズの、バイコヌール宇宙基地から宇宙に行く時代が始まって、今は、すっかり日本人がロシアから宇宙に行くのが当然の時代になりましたけども、もしかすると今回のフライト以降はまたフロリダの、アメリカのフロリダから宇宙に行く時代がやってくるかもしれない。 われわれ、オールド世代からすると、以前の状態に戻るなという感じですけども、今の若い人たち、子供たちは、むしろロシアから宇宙に行くのが当たり前の時代から、アメリカから宇宙に行ける時代に変わるんだというふうに見てもらえるかもしれません。 いずれにしても、この大きな転換点に、これまでの経験と、あるいはエンジニアとしての経験を生かして、挑戦させていただけるということに、非常にやりがいとモチベーションを感じております。 3つ目のキーワードは、やはり2020ということですね。2020年、言うまでもなく東京オリンピック・パラリンピック、日本の皆さんが非常に盛り上がる年であろうと。そういう年に宇宙に行けるっていうことは、やはり自分としてもモチベーションですし、オリンピック開催が決まったとし、私はフロリダの海底訓練基地に行っておりまして、そのときに、2020年にオリンピックが来るんだな、そのときに僕はまだ現役でいるんだろうかと思った覚えがありましたけれども、ある意味、この年を目指して現役を続けてこれたということに、すごく感慨を覚えますし、また、宇宙分野で言うとH3ロケット、われわれが今、開発を進めているH3ロケットの初号機打ち上げ、あるいは今、宇宙を旅してくれている「はやぶさ2」くんですね、はやぶさ2が地球に戻ってくる年でもあります。さらにさかのぼっていくと、バズ・オルドリンさんたちが月面に着陸した1969年からちょうど50年が過ぎるタイミングでもあるということで、月面着陸から50年で宇宙探査のパイオニアから、この新しい新型宇宙船をもって、新しい国際宇宙探査に踏み出していくきっかけの年になるのではないかと。で、なんと言ってもオリンピック・パラリンピックの選手の皆さん同様、私も、宇宙という舞台で日本の代表として国民の皆さまと、感動を分かち合えるというようなミッションにしていきたいなと思っております。 なんと言っても、この世界で一番高いところにある日章旗は国際宇宙ステーションですので、日本選手の皆さんも、一番高いところに国旗が上がるように、頑張っていただきたいなと。それは宇宙ステーションからも応援したいですし、今の予定ですと、オリンピックの開会日には地上に戻ってきていますので、そういう意味では聖火リレーで、宇宙を旅したトーチをぜひ国立競技場に持っていきたいなと思っております。