令和7年度予算編成に向けた議論開始 経済対策は「必要性を精査すべき」との意見も
財務省は16日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会の分科会を開き、令和7年度予算編成に向けた議論を始めた。デフレからの完全脱却が近づく中、新型コロナウイルス禍の対応で緩みが出た財政の規律を取り戻すことが急務となっている。27日投開票の衆院選後の編成が見込まれる経済対策についても「有効な政策を積み上げていくことが重要」などの声が出た。 ■昨年度上回る大規模補正 「昨年を上回る大きな補正予算を成立させたい」。 石破茂首相は15日、遊説先の福島県いわき市で、経済対策の裏付けとなる6年度補正予算の一般会計の歳出について、5年度の13兆円を超える規模にする考えを表明した。 石破政権は7年度に国・地方の財政の健全性を示す基礎的財政収支（プライマリーバランス、PB）を黒字にする目標を引き継いでいる。ただ、補正予算のうち執行が7年度にずれ込む部分が多いと、黒字化は困難になる。首相の発言は「選挙目的で量を示した」とも受け取れる内容だ。 16日の会合でも「必要性を十分に精査すべきだ」「まずは7年度PB黒字化を目指していくべきだ」といった意見が相次いだ。 デフレからの完全脱却を遂げるには、物価高を上回る賃金上昇の定着と消費拡大がカギを握る。企業の投資を引き出すため、生産性向上や価格転嫁も重要だ。 ■財政余力の確保を求める声も だが、やみくもに財政出動に走るわけにはいかない。特に要注意なのが日銀の金融政策変更の影響だ。日銀が利上げを進めると、国の借金に当たる国債の利払い費が膨らんで財政はさらに悪化する。日銀に代わる安定した国債の買い手を確保する必要性も生じている。 8月の臨時情報（巨大地震注意）で関心が高まる南海トラフ大地震など、次の有事に備え、財政余力の確保を求める意見もあった。 会合終了後に記者会見した増田寛也会長代理（日本郵政社長）は「経済成長と財政健全化の両立が予算編成の中で現れることが大事だ」と語った。 財政審は今後、少子化対策や防衛費の増額に伴う歳出改革なども議論する見通しだ。11月にも予算編成に向けた建議（意見書）として取りまとめる。（米沢文）
