トランプかハリスか、いよいよ「大統領選」へ…一見「好調」にみえる11月の米国株市場にひそんだ「波乱要素」
直近の米国経済指標
米国経済は好調を維持しています。 実際、経済指標の発表値とエコノミストなどの事前予想との乖離の度合いを指数化した、米シティグループが算出している「エコノミックサプライズ指数」はプラス17.20と、ユーロ圏や日本がマイナス圏にあるのと対照的に、安定した経済成長を続けています。 たったの2年前にテスラ株を「100万円」買っていたら、今いくらになっている? また、10月10日に発表された米国の9月消費者物価指数(CPI)は、前月比で0.2%の上昇となり、市場の予想である0.1%を上回りました。また、前年同月比では2.4%の増加となり、前月の2.5%からはやや減速したものの、予想の2.3%を超える結果でした。ただし、前年比の上昇率は2021年2月以来、約3年半ぶりの小幅な伸びにとどまっています。 市場が特に注目したのは食料とエネルギーを除いたコアCPIで、その前月比は0.3%上昇し、予想の0.2%を上回りました。さらに前年同月比では3.3%の伸びとなり、8月の3.2%から上昇に転じたことにより、物価の減速が順調ではないのではとの懸念が生じています。 中古車やトラックの価格は前月比で0.3%の上昇と、4か月ぶりのプラスとなりました。その他、医療サービスが0.4%、自動車保険が1.2%、衣料品が1.1%、航空運賃が3.2%の上昇を示しています。 一方、物価上昇が長期化する要因として注目されている家賃は、前月比で0.3%の増加と、前月の0.4%からやや緩やかになりました。帰属家賃も前月比0.3%の上昇で、前月の0.5%から鈍化しており、将来的には物価上昇がさらに緩和されるのではとの期待を高めています。 特に米労働市場の底堅さと消費の堅調さは、経済のソフトランディングへの期待を高め、投資家にとって安心材料といえるでしょう。こうした指標は、インフレ圧力に対する懸念がある中でも、米国株の魅力を支える要因となっています。
第3四半期決算の途中経過までの注目ポイント
米国は2024年第3四半期の決算発表シーズンを迎えており、S&P500に採用されている企業の約4分の1が決算を終えた時点の経過を見ると、そのうち79%が売上高で市場の事前予想を上回りました。これは過去10年間の平均である74%より良好な結果です。また、64%の企業が売上高予想を超えており、こちらは過去10年の平均と同水準です。このように、今期の決算シーズンはおおむね好調に推移しています。 【好決算にも関わらずEPS予想が下がる背景とPER(株価収益率)】 一方、決算内容は堅調にもかかわらず、2024年と25年のEPS(1株当たり純利益)のコンセンサス予想が下方修正されつつあります。特に工業、ヘルスケア、エネルギーの3セクターが原因です。 工業セクターは米国全体の経済が堅調な中、ここだけが足踏み状態にあります。 ヘルスケア分野では、製薬大手イーライリリー(LLY)が新たに販売する減量薬「ゼプバウンド」の価格を引き下げ、短期的な利益見通しが低下しました。エネルギーセクターでは原油価格の下落が利益を圧迫しています。 これにより、S&P500の2024年のEPS予想は239.46ドル、25年は275.47ドルとされ、それぞれ前年比+8.8%、+15%の成長率となっています。 またS&P500の株価収益率(PER)は、向こう12カ月のEPS予想に基づくと約22倍です。これは過去10年間の平均18倍と比べると、やや割高と見られます。 【現時点の決算で注目された企業】 今回の四半期決算の途中経過で注目を集めたのは、JPモルガン(JPM)、ゴールドマン・サックス(GS)などの投資銀行です。これらの企業は株式トレーディング事業の好調が寄与し、良好な決算を発表しました。 また、航空業界ではユナイテッドエアラインズ(UAL)が予想を上回る好調な決算を発表し、特に目立ちました。加えて、ネットフリックス(NFLX)は魅力的なコンテンツ戦略により、新規契約者数が伸び、安定した収益を確保しています。 【ハプニングのASML決算】 半導体製造装置メーカーASML(ASML)では、予定より1日早く誤って決算を公開してしまい、その内容も市場予想に届かず投資家の間で混乱を引き起こしました。EPSは予想の5.36ユーロに対して5.28ユーロ、売上高は予想78.7億ユーロに対して74.7億ユーロと期待に届かず、さらに新規受注も予想の50億ユーロの約半分である26億ユーロに留まりました。主要顧客であるインテルやサムスンが発注を先送りしたことが原因とされています。 以上のように、2024年第3四半期の決算シーズンは総じて良好な成績を見せつつも、特定セクターの課題や企業ごとの対応策が浮き彫りとなりました。