「見に来てくれた君たちに命をあげるよ!」西城秀樹は一体何が凄かったのか<フィルムコンサート参戦記>
「あなたとぼくのカーニバル」
「さようならー!」 終演、ちぎれるような勢いで、何度も何度も客席に手を振る彼は、大好きな人の背中をずっと見送る、子どものようだった。 こんなに全力で瞬間を生きる姿を見せられたことはない。きっと彼は楽屋でぶっ倒れている。「自分を愛してくれる人を喜ばせたい」。そのたぎる思いが、限界まで彼を走らせ、歌を届けさせたのだ。MCで、彼が「BIG GAME」というコンサートを、こんな言葉で喩えていたことを思い出す。 「あなたとぼくのカーニバル」 あんなに広い野外コンサートでも、彼は「みんな」ではなく、「あなた」一人一人と祭りをしていたのだ。 会場に明かりがつき、Zepp Nambaが2024年に戻る。 サイリウムの青が、ぼんやりと滲んで見えて仕方なかったのは、老眼のせいだけではないはずだ。 ありがとう、いい夏をありがとう――! 田中 稲(たなか いね) 大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。 ●オフィステイクオー http://www.take-o.net/
田中 稲