連鎖破たん相次ぐテックコーポレーション、取引実態に疑問の声
いまだ真相はやぶの中だ――。 話題の中心にいるのは、3月18日に負債191億9,486万円を抱えて破産開始決定を受けた(株)テックコーポレーション(TSR企業コード:740278177、広島県、以下テック社)だ。債権者数400名を超え、連鎖破たんは確認されるだけで約10社にのぼる。 一部の債権者は手形を振り出し、受け取ったテック社はそれを割引に廻していた。これから決済期日を迎える手形もあり、途方にくれる振出人(企業)もいる。 テック社に多額の手形を振り出していた企業の代表者が東京商工リサーチ(TSR)の単独インタビューに応じた。 代表者は「テックコーポレーションの倒産後に(取引実態を)調べたら、詐欺的手法だとわかった。取引時はまったく疑わなかった」と悔やみきれない胸中を語った。
◇ ◇ ◇ テック社は、電解水生成装置など環境機器を販売していた。展示会などで商品をPRし、顧客への販売の大半は代理店が手掛けていた。また、全国の企業にアプローチし、販売代理店網を広げていた。代理店となった企業は別に本業があり、環境機器の販売と親和性が薄いように思えるケースもある。 債権者などへの取材によると、テック社の商流は大まかに次の通りだ。 1.テック社が商品(環境機器)の購入先(エンドユーザー)をみつけ、販売代理店に注文書を示す 2.販売代理店は注文を受けるとテック社に環境機器の製造代に対応する形の手形を振り出す 3.テック社は受け取った手形を割引し、環境機器を製造。約半年後に購入先に納品する 4.テック社は、手形を振り出した販売代理店に手形決済日の数日前に手形額面に5%を上乗せした金額を振り込み、装置を買い戻す だが、テック社の破産で代金は振り込まれない。見返りの入金がないまま手形の決済を迫られ、不渡りに追い込まれる企業が相次いでいる。
架空の注文書
テック社に手形を振り出していた企業の代表者はTSRの取材に応じ、「注文先から『テック社から形式的で良いので注文書を書いて欲しいと頼まれ、複数枚書いた』と打ち明けられた」と語る。「架空の注文書を書いた企業の多くは、実際の取引に注文書が使われていることを知らなかった」と続ける。 その上で、「いつからかはわからないが、(テック社は)架空の注文書を利用して詐取した手形を金融機関に持ち込み、割引して運転資金に充てていた」と分析する。ただ、「購入先に実態があり、(自振手形額面に)5%を上乗せして戻ってくる取引もあった。だが、いつの間にか架空取引になっていた」という。 実際の販売が低迷するなかで販売代理店から手形を振り出してもらうため、5%を上乗せするスキームを多用していた可能性が出てきた。