ドラマ『わたしの宝物』がもたらした衝撃とは? 松本若菜、田中圭、深澤辰哉がみせた演技の魅力を深掘り解説
12月19日に最終回を迎えた松本若菜主演ドラマ『わたしの宝物』。“托卵”をテーマに、松本演じる美羽と、田中圭が演じる夫の宏樹、そして深澤辰哉演じる美羽の幼なじみ・冬月稜の複雑な関係を描いた本作。本稿ではキャスト陣の演技を中心にドラマを振り返ってみたい。(文・柚月裕実)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】修羅場が止まらない…松本若菜はじめ、実力派キャストの貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『わたしの宝物』劇中カット一覧
“托卵”をテーマに描かれた『わたしの宝物』
本作は、2014年放送『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』、2023年『あなたがしてくれなくても』に続く3部作として、三竿玲子プロデューサーが手がけた作品で、夫以外の男性との間にできた子どもを、夫との子と偽って産み育てる“托卵”をテーマに、神崎夫婦と冬月を中心に人間模様を描いた。 初回から夫婦関係のもつれ、幼なじみとの再会、そして妊娠発覚、冬月の事故の一報ーーと、怒涛の展開で視聴者を釘付けにした。 お互いに好きあって結婚した美羽と宏樹。しかし夫婦としてどれだけ年数を重ねようが、必ずしも成熟していくものとは限らないーー。家庭に入った美羽が子どもを望むも、宏樹からのモラハラが続く日々。その姿は、劇中に登場する鳥かごの中で羽ばたけずにいる鳥のようだった。 そんな中、美羽の前に救世主のごとく現れたのが幼なじみの冬月。淡い思い出を手繰り寄せながら、急接近する2人。同時期に宏樹からは強引に、そして冬月とは惹かれあい......美羽の妊娠が発覚。それは火遊びというもので片づけられるものではなく、どこか使命感に駆られたような美羽は、産むことと同時に“悪女”として生きる覚悟を決めたのだった。
“悪女”・松本若菜
掃除が行き届いた部屋からも伝わるように、妻としてきっちり役目を果たしていた美羽。挨拶一つ返さない宏樹に、それでも柔らかい笑顔を浮かべて気を遣い、一方で静かに心が死んでいく......。そこへ事故の一報と、“托卵”を決意するのに、視聴者も納得してしまうような条件が重なっていた。 妊娠、DNA検査の結果と、節目節目で美羽の覚悟が見えてきた。当初は空白だった母子手帳の“父親”の欄に宏樹の名前を記し、第3話の前半では、宏樹に子の名づけを依頼。冬月との思い出のしおりを母子手帳に挟んだところで表情を変えた。妊娠出産を経て、ここから先は悪女として生きる、そんな覚悟を決めた表情がインパクトをもたらした。 言葉にしなくても心の中で固く誓い、張り詰めていた糸がブチンと切れる音が聞こえてきそうなほど、松本の演技には静かな迫力があった。 前クールでは火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(TBS系)で、明るく前向きな西園寺一妃役が好評だっただけに、そのイメージをガラリと変え、雰囲気を一変させた芝居のふり幅はお見事だ。役柄は悪女ではあったものの、松本の出演作には見ごたえがあり、今後の出演作が待ち遠しい。