マルチモーダルLLM活用の次世代SNSプラットフォーム「SEELE」が1000万ドル調達、3Dコンテンツを手軽に生成
3Dマルチモーダルを活用した次世代ソーシャルプラットフォームを運営する「SEELE AI(全霊網絡)」が、プレシリーズAで1000万ドル(約15億5000万円)を調達した。IT大手の百度(バイドゥ)の投資部門、ネットサービスの美図(Meitu)、富坤創投(Richland Equities)などが出資に参加し、既存株主のWebtime Information S&Tも加わった。資金は主にチーム拡充や、新たなAIGC(AI生成コンテンツ)ゲームエンジンの開発に充てられる。 生成されたキャラクターなど、もっと写真を見る SEELEは2022年に設立され、3Dマルチモーダル大規模言語モデル(LLM)の開発に注力している。簡単な指示で生成できる多彩な3Dコンテンツを通じて、これまでにない新しいかたちのソーシャルプラットフォームを構築した。創業者の王詩沐氏はかつて、中国ゲーム大手の網易(ネットイース)傘下「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」の幹部や、テンセント(騰訊控股)のプラットフォーム・コンテンツ事業グループ(PCG)の製品イノベーション組織「Nbase」の責任者を務めた。チームのコアメンバーは、テンセント、バイトダンス)、アリババなどIT大手での勤務経験が長く、LLMやコンピューターグラフィックス(CG)のアルゴリズムを専門とする博士やゲーム技術の専門家なども多い。 SEELEはすでに北米市場で自然言語を使ったリアルタイムの3Dソーシャルサービスをリリースしており、簡単なプロンプトでキャラクターやシーン(空間)、インタラクティブなコンテンツを生成することができる。 王氏によると、ユーザーは自分で空間、オブジェクト、交流方法をカスタマイズでき、この3つを自由に組み合わせてオリジナルの世界を作り出すことができる。また、テキストや音声などで3Dキャラクターと交流することができ、キャラクターをタップするとリアクションやコメントが返ってくる。 ユーザー体験をさらに向上させるため、コンテンツ生成機能も開放した。ユーザーがテキストや音声、画像を入力すると、システムがカスタマイズされたキャラクターや空間を生成し、立体的な動きや交流が可能なバーチャルキャラクターを作ることもできる。 SEELEは消費者向け市場をターゲットにしている。王氏は、3DとAIを組み合わせたサービスは技術的なハードルが高いため、誰もが参入できるわけではなく、消費者向けなのでスケールメリットもあると説明する。 まず北米市場へ進出した理由として、海外市場は大きく、同様のサービスが極めて少ないため、創業当初からグローバル化を見据えてきたとした。 こうした差別化が奏功し、同社のプラットフォームはゲーム業界の人たちやクリエイターたちをひきつけ、わずか半年の間に海外向けサービスは100万人近いユーザーを獲得した。 今後の発展戦略として、ライトなエンターテインメントからより複雑な3D体験への展開を目指し、最終的にはゲーム市場に進出して、いずれは「ワンセンテンスで簡単なゲームを生成」できるようにしたいとする。例えば、「柴犬と一緒にパルクールをしたい」という要望を伝えるだけで、システムが自動的にクエストやNPC(ノンプレイヤーキャラクター)を含むゲーム世界を構築し、ユーザーの要望を反映したゲームを楽しめるといった具合だ。 開発チームは現在数十人ほどをキープしている。王氏は少数精鋭チームにこだわる理由として、スタートアップ企業はそれほど多くのスタッフを必要とせず、基本的にAIの生産性に頼っており、人件費を抑えられることを挙げ、ビジネスモデルを確立するまでむやみに増員はしないと説明した。 同社は、評価額100億ドル(約1兆5500億円)規模のデカコーン企業への成長を目指している。将来的には、ユーザーがSEELEのサービスを通じて物理世界の限界を打ち破り、想像力にあふれる空間で新たな体験を楽しめるようにしたいと王氏が述べる。 *1ドル=約155円で計算しています。 (翻訳・36Kr Japan編集部)