京都市バス運転士たりなくて「非常事態宣言」…休暇取得率や「年収1000万」アピールし募集
京都市バスの運転士が足りない。市交通局は「市バス運転士不足 非常事態宣言」を発出して、今秋、新たに採用活動を始めた。その成果やいかに――。(相間美菜子) 【写真】「非常事態宣言」となり、熱烈にバス運転士を募集するチラシ
運転士不足の背景の一つには、「2024年問題」がある。今年4月から、長時間労働を是正する働き方改革関連法が施行され、運転士にも時間外労働の上限規制が適用された。
交通局では、現行ダイヤの運行を維持するのに計880人の運転士が必要だが、9月1日時点で約50人が不足している。加えて、来年度以降、定年退職などで毎年約50人が減っていく。
手をこまねいているわけにはいかない。交通局は7月下旬から1か月、新規採用者70人を募集した。しかし応募は47人。危機感を抱いた交通局は9月末、非常事態を宣言するに至った。
<このまま人員不足が続けば市バスの現行の路線・ダイヤを維持することが難しくなることから、ここに「市バス運転士不足 非常事態宣言」を発出します>
市バスの運行維持は市民生活に直結する重大事なだけに、宣言は賛否を呼んだ。市議会の産業交通水道委員会では「宣言すれば今の状況を打開できると本当に考えているのか」(市議)などの厳しい意見も。将来的に減便する地ならしなのでは、と受け取る市議もいた。
宣言の真意を、北村信幸・交通局長は「決して宣言はバスの減便ありきのものではない。まずは交通局の現状や経営状況を知ってもらいたい」と説明する。交通局は宣言を発出するとすぐ、“ここが天王山”とばかりに、緊急措置として70人以上の職員の募集を始めた。
夏の採用時と比べ、処遇改善に取り組んでいる姿勢を前面に押し出した。チラシには「休暇取得率約100%」と記し、働きやすさをアピール。「勤務状況によっては1000万円近い年収も可能」と、頑張りたい人に応えられる給与体系であることも付け加えた。
その結果、11月までの募集には、定員の倍以上の158人から応募があった。転職希望者が多いといい、担当者は「宣言で多くの人に関心を寄せてもらったことで、家族から勧められた人など、これまでになかった幅広い年代から応募があった」と喜ぶ。