「妊娠中のストレス」が「次世代に与える影響」…「驚きの結果」と「切実な問題」を提起したマウス研究の全貌
妊娠中の母親マウスのストレスがお腹の仔に与える影響
また、「ストレス母親マウス」から生まれてきた赤ちゃんマウスの腸に健常母親マウスの膣内マイクロバイオータを移植しても、子宮内でストレスにさらされた赤ちゃんに生じた影響を解消することはできませんでした。 これらの結果から、母親マウスが妊娠中に受けたストレスは、出生前の赤ちゃんマウスに直接的に影響を与えるだけでなく、母親マウスの膣内マイクロバイオータの組成を変化させ、その膣内マイクロバイオータに赤ちゃんマウスが出産時に触れることで、間接的にも赤ちゃんマウスに影響を与える可能性があることがわかりました(※参考文献2-26)。 マウスの実験結果をヒトにそのまま当てはめて考えることは非常に乱暴ですが、想像をたくましくして考えると、ストレスによって母親の膣内マイクロバイオータが変化し、出産時に赤ちゃんがその膣内マイクロバイオータに触れることで、子供の腸内環境にも影響を及ぼす可能性があるかもしれません。 その変化が健康にどのような影響を及ぼしていくか、ヒトにおいての研究成果が待たれます。 ※参考文献 2-26 Jašareviéc E et al., Nature Neuroscience 21, 1061-1071, 2018. * * * 初回<なぜ「朝の駅」のトイレは混んでいるのか…「通勤途中」に決まって起こる腹痛の正体>を読む
坪井 貴司(東京大学大学院総合文化研究科教授)