金星まであと一歩だった日本ラグビーが見せた強みと課題
後半32分、この日初めてのリードを奪った。フルバック五郎丸歩副将のペナルティーゴール成功で、18-15とした。クライマックスでの失点で逆転されるが、その直後の反攻で「20,515人」のスタンドを沸かせた。 司令塔、スタンドオフの小野晃征の実感。 「ボールさえキープすれば、相手の反則も取れる。まずはキープ」 意志は、試合終了のブザーが鳴ってからも貫かれた。敵陣の22メートル線が見えてきた。 しかし、最後はナンバーエイトのアマナキ・レリィマフィが落球する。関西大学Bリーグの花園大出身で、今秋から代表入り。この日も80分間を通してパワーを発揮してきたフレッシュマンだったが、力尽きたか。 「普通なら考えられへんけど…」 相手はすぐに、タッチラインの外へ楕円を蹴り出した。 18-20。いわゆる「あわや金星を逃す」といった内容で、戦い終えるのだった。 テストマッチ10連勝中だったラグビー日本代表「JAPAN XV」は11月1日に神戸で、ニュージーランドの先住民であるマオリ族をルーツに持つマオリ・オールブラックスに21-61と40点差をつけられ完敗を喫した。 「きょうはあえて、チャレンジの要素を加えました。グラウンドのどこからでもアタックした。来週は、もっとスマートにプレーします」 兵庫のノエビアスタジアム神戸で、ジョーンズHCは妙に明るい表情だった。着任して約2年半で世界ランクを11位(一時的に10位)とした日本代表の攻撃を、「国際ラグビーボードの世界ランクで6、7位くらい(は現在)」のマオリ・オールブラックスを相手にフル出力。それがどのくらい通用するのか、問題点があるとすればどこかを見たかったのだ。 攻めて、攻め込んだ先で球を失い、あっという間に大量失点した格好だった。「特にカウンターアタック(手数の少ない攻め)で(相手の)組織力を感じました」とは、この日に先発して敗れたロック伊藤鐘史だ。マオリ・オールブラックスはJAPAN XVのランナーに鋭いタックルをかましてじっくりと守備列を形成。JAPAN XVがたまらず複数のサポート役をランナーにつければ、次の局面で孤立したJAPAN XVの選手をマオリ・オールブラックスの束が強襲。ミスを誘って攻撃権を得るや、短い手数でインゴールまで駆け抜ける…。JAPAN XVが奪われた8つのトライのうち6つは、攻守が逆転する「トランジション」という局面でのものだった。