金星まであと一歩だった日本ラグビーが見せた強みと課題
4年に1度のワールドカップイングランド大会まで、あと1年弱。イングランドでの本番では世界ランク2位の南アフリカ代表、スコットランド代表、サモア代表、アメリカ代表と順にぶつかる予選プールを経て、史上初の準々決勝進出を目指している。 今回のシリーズで露呈したワールドカップへの課題は、やはり「トランジション」などの「アンストラクチャー(両者が組織を整えていない状態)」の際のプレーぶりか。事実、秩父宮で後半37分に喫した逆転トライの契機は、敵陣のラインアウトでのミスの直後に喰らった雪崩の攻めだった。 もちろん、その課題はいまに見つかったものではない。国内の梅雨時にマッチメイクされたウェールズ代表戦やイタリア代表戦では勝利を収めた日本代表だが、昨年の今ごろにぶつかった世界ランク1位のニュージーランド代表には、マオリ戦シリーズと似た展開で6-54と苦杯をなめた。トンガ代表やフィジー代表など、環太平洋系の身体能力を活かすチームにも苦戦を強いられてきた。指揮官も以前、「過去3年で、日本が悪かった試合は、相手が身体能力が高くて(攻守の)切り替えが早いチームだった時です」と話している。 今回の合宿中、4日の午前練習でのことだ。 ジャパンが「敵」と「味方」に分かれて実戦練習をしているなか、突如、会場の東芝グラウンドで鐘の音が鳴った。すると選手は球を捨て、横一列になってゴールラインに向かって走り出す。場内音声は続く。「5、4、3、2、1」。合図を受け、走っていたプレーヤーはコーチの転がしたボールを拾って攻防を再開する。さらに使用球は、しばしアメリカンフットボールのものに変わった。これは「トランジション」の課題克服を目指してのことだと、指揮官は認めた。 「個々で、瞬時に、どう判断するか。ワールドカップに向けたプロジェクトです」 ただ…。身も蓋もないことも言わざるを得ない。 「私の責任ではないですが、日本ラグビー協会が選手の強化を真剣に考えないといけないと思います。こうしたスキル(アンストラクチャーでの瞬時の判断)は本来、13歳から18歳のうちに磨かれるものです。いま行っていることは、絆創膏で傷口を塞ぐような作業です」