金星まであと一歩だった日本ラグビーが見せた強みと課題
「試したい。ただ、(実験の結果)負けてばかりだと、自信を失ってしまう」 東京・秩父宮ラグビー場での第2戦に向けての合宿で、ジョーンズHCは、「シェイプ(攻撃陣形)」の修正を施した。おもにバックスのランナーをサポートするフォワードに、グラウンドの左右幅をまんべんなくカバーさせるようにした。前のゲームではフォワードが一箇所に固まる傾向があり、それ以外の場所で球を奪われていたと感じたのだろう。そのため、交通渋滞を整理させた。 スタンドオフ小野は「ブレイクダウン(ボール争奪局面)にフォーカスした。(ランナーへの)2人目の寄りを速く。それをすれば、相手はそのブレイクダウンは捨てる」。付け加えれば、誰もがその「2人目の速い寄り」をしやすいよう手はずを整えたと言えよう。ジャパンの人々の談話には、「フォワードの役割を明確にした」「攻撃のバランスを考えた」といったものが並んだ。 この日、1戦目の失点のおもな理由だったブレイクダウンでのターンオーバーは、限りなく減った。接点の近くにも、広いスペースにも、「バランス」よくフォワードの選手がカバーするよう、声を掛け合っているようだった。バックスの先発7人中3人が突破力とボールキープ力に長けた海外の血の入ったランナーだったことも奏功した。攻撃を継続でき、さほど攻められなかったからこそ、後半37分まで3点リードで過ごすことができた。 殊勲者の1人は、司令塔の小野だろう。キックを蹴る際は「しっかりと深く」をイメージして相手を後退させ、「相手が(ブレイクダウンの近くからタッチライン際へ)流れてきている時」は直線的なランで前進した。 新たな陣形のもと「役割が明確になった」であろうフォワード陣は、攻守の起点であるスクラムやラインアウトでも鍛錬の成果を示した。後半7分にジャパンが得たペナルティートライは、敵陣ゴール前右でのスクラムで相手を崩して奪ったものだった。 「セットプレー(スクラムとラインアウトなど)が強みになるのはわかっていた。ドミネート(圧倒)できる、と」 フォワード8人が一体となるスクラムの碇、プロップ畠山健介は会見で言った。