士業はスペシャリストを目指すべきなのか (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
『資格起業バイブル(横須賀輝尚 著)』
大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書「資格起業バイブル」から、再構成してお届けします。
■最初から仕事を選んでいると、仕事は増えない
『Q.「専門業務を絞るべき」と先輩から教えてもらったので、専門以外は受けないつもりです。 社会保険労務士で開業を考えています。事前に活躍している先輩方に聞いたところ、専門分野を持って営業したほうがよいといわれました。そこで、就業規則専門の社会保険労務士を目指し、それ以外の仕事は極力受けない方向でいこうと考えています。』 専門分野を絞って営業をする。こうしたアドバイスをされる方も多いですし、また実際にこの方法で成功している人もいます。ですから、回答としては「正解」です。しかし、注意する点があります。 まず、業務を絞ること自体は問題ありません。社労士全般の仕事ができます、というよりは「就業規則に強い社労士です」と営業したほうが記憶に残りますので、間違ったセオリーではありません。さらに専門を絞って明確にすることで、紹介も増えやすくなります。ただ、気をつける点は、最初から仕事を選んでいると思われると、かえって紹介では仕事が増えないという点です。 企業を何年も経営している経営者は、創業の苦労を知っています。やり方にもよりますが、創業間もない時期というのは仕事があるだけでありがたく、仕事の大小に関係なく仕事があることそのものに感謝しなければならない時期です。ですから、そういった創業者を見ると仕事を出してくれる人も多いのです。 事実、私は20代前半で開業したため、同じ時期に創業した経験のある経営者からは大変親切にしてもらえました。仕事をいただけることはもちろんのこと、なかには食事をご馳走してくださったり、何かにつけて心配してくださったり、今思い返しても本当に感謝しかありません。 しかし、そういう創業の頃から「この分野以外は受けない」というスタンスでいたらどうでしょうか。おそらく気をつかって仕事を出そうとしていた経営者も、「申し訳ないですが、この分野の仕事しか受けたくないのです」といわれたらその後、協力する気持ちが萎えてしまいます。これは経営戦略がどうというより、人として紹介が増やせるかどうか、という問題です。ですから、専門を絞るというのはかまいませんが、「仕事を最初から選んでいる」と思われないようにしたいものです。