“茶会”であり“リレーショナルアート”。森美術館で行われたシアスター・ゲイツのクローズドイベントをレポート
「私たちの間にあるのは分断ではなく、美と寛容である」
今年8月6日、森美術館「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」の特設会場で、シアスター・ゲイツを囲んでの招待制のクローズドイベントが行われた。 このイベントは、茶の湯文化における伝統の継承に携わる伊住禮次朗が主宰する「茶美会(さびえ)」とシアスター・ゲイツのコラボレーションイベントで、コンセプトおよびタイトルには「Beauty and Generosity between us, not division(私たちの間にあるのは分断ではなく、美と寛容である)」が掲げられた。 伊住は、父である裏千家15代鵬雲斎二男・伊住政和(茶名:宗晃/1958~2003)が1988年に「茶の湯を通して新しい美の鑑賞と創造に立ち合う会」として始めた「茶美会」の活動を引き継ぎ、展開している。「茶道」や「茶会」という言葉が持つ固定的なイメージを打破するための試みだったといい、92、93年に行った「茶美会」の展覧会には、田中一光、黒川雅之、三宅一生、勅使河原宏、エットーレ・ソットサス、崔在銀らも関わった。 主宰の伊住禮次朗は、「1988年に立ち上がった茶美会は、2022年から現代アートとの接点を模索してきました。そして此度、茶の湯、そしてアートが現代社会に示すべきものについて話し合ってきたアーティストのシアスター・ゲイツさんの個展に合わせ、彼とのコラボレーションからなる茶美会の一会を開催しました。森美術館の中に2時間だけ存在した『茶美会』の試み。いまの世界に必要な、分断の対岸に『美と寛容』を示す場として提案するものです」と話す。 じつはシアスター・ゲイツは、2023年11月、京都・大徳寺 芳春院で実施した茶美会の茶会であり、現代美術家ナカヤマン。のリレーショナルアート作品として企画された「黒節分/WHITE2BLACK」に客として参加し、そこで関係性へのこだわりにインスピレーションを受けたという。そして、伊住とナカヤマン。、あるいは日本人のひたむきなまでの「関係性」と「美」と「寛容さ」へのこだわりを指摘した。この経験は、ゲイツが「さらに寛容になるには」「さらなる美を生み出すには」と考える切っ掛けにすらなったといい(*1)、今回のクローズドイベント開催につながっている。