JR西日本「消滅危機」ローカル線ランキング、1位は大赤字!100円稼ぐのに1万1766円投入
● 話し合い拒否の自治体と JR西日本を国交省が仲介 JR西日本はすでにこの区間について、持続可能な交通体系の実現に向けた議論の意向を示してきたものの、自治体側は「協議入り=廃止検討」という懸念を持ち、話し合いを長らく拒否してきた。現在は国土交通省が仲介に入り、協議への参加が義務付けられる「再構築協議会」によって、「地域交通の存続」を目指した話し合いが続けられている。 ただ、広島・岡山両県とも、「JR西日本は不動産業でも利益を上げている。なぜローカル線の維持を負担できないのか」といった一方的な主張を続けており、協議はしばらく平行線をたどりそうだ。 芸備線に限らず、ローカル線の沿線自治体は「とにかく鉄道を維持し、費用はJRか国が一方的に負担」という主張を続けている。しかし、営業係数のワーストランキングに来る路線は1日の利用者が100人以下にとどまるなど、鉄道として存続する意味を見出しづらい。 それでも存続するのであれば、地域で相応の負担(上下分離や第3セクター化など)をするか、そうでなければ収益、利便性ともに優れるバスなどに転換するといった議論を進めて然るべきだろう。
● 幹線で必要だけど保守費用が膨大 動物対策も必要!JR西日本の苦悩 JR西日本が抱える17路線・30線区の赤字路線で、営業係数とは別に悩ましい問題がある。それは、幹線路線の赤字額(運輸収入から営業費用を引いた数値)だ。 ランキング28位の山陰線・出雲市駅~益田駅間の営業係数は「557」で、運輸収入は年間6.8億円ある。ところが、赤字額は対象30線区でトップの年間30.8億円を記録している。 この区間は松江市と出雲市から県西部、山口市方面を結ぶ特急「スーパーおき」のルートでもあり、18年の豪雨災害で山陽本線が運休となった際には、貨物輸送の代替ルートとして活用された。1日平均932人に利用されているものの、幹線鉄道として保守管理を行うための費用が年間37.6億円もかかっている。 JR西日本の赤字路線の傾向として、営業係数ワースト路線は、乗客が極端に少なく輸送機関としての役目を果たしていないと言えるだろう。一方で、赤字額の上位路線はそれなりに役目を果たしているのだが、それはJR西日本の赤字負担で成り立っており、今後はこういった幹線路線の巨額赤字対策も求められていくだろう。 27位の紀勢線・新宮~白浜間も、営業係数は「703」ではあるものの、赤字額は29.3億円もある。こちらも山陰本線と同様の事情で保守費用がかかるうえに、紀勢線全体で年間500件以上も発生する「動物との衝突事故」への対策費用もかかる。年間の営業費用は30線区中2位の34.2億円かかっており、運輸収入は4.9億円あるものの、巨額の赤字を避けられない状況だ。