西陣織の老舗「HOSOO」がミケーレ・デ・ルッキとコラボ。ファブリックで見せる新たな風景
元禄年間(1688年)に京都・西陣で大寺院御用達の織屋として創業し、いまなおアップデートを続けるHOSOO。その新作テキスタイル・コレクション「The Mind Landscape」が、京都市内のHOSOO GALLERYで始まった。 本展は、今年4月にミラノデザインウィークにて発表されたHOSOOの新作テキスタイル・コレクション「The Mind Landscape」を日本で紹介するもの。心象風景を意味する「The Mind Landscape」コレクションは、イタリアの著名建築家でありデザイナーであるミケーレ・デ・ルッキが率いるスタジオAMDL CIRCLEとHOSOOの協業のもと制作された。、 ミケーレ・デ・ルッキは1951年イタリア生まれ。前衛的なデザイナー集団「メンフィス」の主要なメンバーとして知られる。1988年から2002年までオリベッティ社のデザイン・ディレクター。これまでヨーロッパの有名企業の家具デザイン、イタリア国内外における公的機関、民間企業、美術館や文化施設など多数の建築プロジェクトを手がけてきた。 またデ・ルッキは、AMDL CIRCLEの創設者であり、現在もそのメンバー。AMDL CIRCLEは建築、インテリア、プロダクト、コミュニケーションなど、様々な分野でプロジェクトをクライアントに提供している。 今回展示された新作テキスタイル・コレクションは、自然に対するミクロとマクロの視点、そして職人の視点を融合し、テキスタイルとして再構築したものだ。 モチーフとなっているのは樹木。生命の循環を支える生態系において重要な役割を果たす樹木は、人間の創作活動においても欠かせない素材だ。「The Mind Landscape」コレクションは、樹木の拡大した写真と衛星写真を融合し、4つのモチーフで展開。それを職人の創造性によって天然繊維を用いた織物として構築することで、マクロともミクロともとれる、新たな風景が立ち上がっている。 会場には新作テキスタイルの数々が宙から吊らされ、制作プロセスで重要なモチーフとなったオブジェクトや写真、本コレクションに関連する樹木や自然、環境にまつわる書籍も展示されている。 樹木というごくありきたりでありながら、複雑な表情を持つモチーフを新たにとらえなおした「The Mind Landscape」コレクション。本展は、ファブリックを通して人と自然の関係、循環について考える好機だ。ミケーレはこう語る。「図面を引くのが建築家と思われがちだが、本来は人間の暮らしがどうあるべきかを表現することが務め。いま暮らしている世界は、この先の人の暮らしに大きく影響する、大事な決断を迫られているタイミングにある。より良い人の暮らしをデザインするのが私たちの義務だ」。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)