アフリカンアメリカンの女性がオバマ政権とApple社で環境リーダーになるまで
「We can change!」 この言葉とともにバラク・オバマ氏がアメリカ合衆国にて、アフリカ系有色人種として初の大統領になったのは2009年1月のこと。2017年の退任までの2期の大統領就任期間に、アメリカ大統領として初めて公式に広島を訪れ、日本人被爆者の男性とハグをしたのも記憶に新しい。 【写真】リサさんも衝撃を受けたミシシッピ川の汚染 そのオバマ政権にて、2009年から2013年にわたり第12代米国環境保護庁( EPA/Environmental Protection Agency)の長官をつとめ、現在、アップル 環境・政策・ソーシャルイニシアティブ担当バイスプレジデントであるリサ・ジャクソンさん。 リサさんはオバマ大統領と同じアフリカ系アメリカ人で、女性だ。 ちなみに、Apple社は2020年にカーボンニュートラルを達成。2022年には同社のサプライチェーンにも脱炭素化を求める「Apple2030」を公表した。昨年9月、初のカーボンニュートラルな製品の発表も行っている。 つまり、リサさんのもと、Apple社のカーボンニュートラルが推進されたということになる。 2024年の夏は、史上初の暑さを記録した2023年よりもさらに暑くなることも予想されているいま、リサさんはなにを思うのか。 現在はティム・クック氏が率いるApple社の役員として環境問題に取り組むリサさんに、FRaUweb編集長の新町真弓が話を聞いた。 インタビュー前編では、アフリカ系アメリカ人として、女性としてどのような経緯でEPAのトップとなったのか、リサさんの人生からお伝えする。
両親は大学に行けませんでした
――アフリカ系アメリカ人である女性として、リサさんは初めてアメリカのEPA長官に任命されました。多くの人にインスピレーションを与え、勇気づける存在だと思います。まずはリサさんの故郷やバックグラウンドについて教えてください。 リサ・ジャクソン氏(以下、リサ)「その前に、あなた方の読者にぜひお伝えしたいことがあります。それは、環境運動において女性はとても重要だということです。 この運動に携わっているリーダーたち、私が働いていたEPA(米国環境保護庁)のリーダー、Apple全体のリーダーを見てみると、最も革新的な仕事をしている人の多くが女性です。女性はもともと困難に際してチームで働くことができ、女性がこの問題を気にかけているからです。 そして、私たちにとって非常に重要なのは、自らのパワーを自覚し、変化を起こすためにそのパワーを使うことです。 私は、米国南部のニューオーリンズで育ちました。両親は大学に行きませんでした。当時は差別があったため、行けなかったのです。 私は数学と理科がとても得意だったので、医師になろうと考えていました。 でも、16歳の高校生の時、優秀な生徒向けの地元のプログラムに参加しました。それは、生徒たちにエンジニアリングに関心を持ってもらおうというプログラムでした。 私は当時、エンジニアリングがどのようなものかも知りませんでした。 それで、大学は工学部に行きました。化学工学です。 しかし学校で、故郷のミシシッピ川の汚染について学び、米国のラブキャナル事件や日本の水俣の環境汚染についても学びました。 このようなことを学んで、医師でいることよりも健康でいることの方が大切だと認識し始めました。 私たちが吸い込む空気、私たちが飲む水、子どもたちが遊ぶ土の問題でもあります。 私の関心はどんどん大きくなりました。 やがて、母は少し寂しそうでしたが、私は医者を目指さず環境の道に進みました。環境の分野が大好きです」