ザ・大石静劇場!「光る君へ」にハマる視聴者たちは、色恋沙汰上等よ(小麻呂も歓迎)
身を引き、あきらめた先に残るは……
それでも一緒になりたい道長は、あの手この手の提案をまひろにぶつける。まずは「海が見える遠い国へいこう、右大臣家も捨てる」と駆け落ちを提案。どう考えても稚拙で建設的ではない夢見がちな提案を、まひろは却下。さらに「妾になってくれ。北の方(嫡妻)は無理だ」と妥協案を出した道長。女のプライドをふみにじられ、まひろは傷つく。まひろの父は官職をとかれ、家はますます貧乏に。一方、道長の家は隆盛期を迎え、横暴に、でも着実に権力を拡大していく。 見かねた父の友人・宣孝(佐々木蔵之介)はまひろに縁談を勧めまくる。お見合いおじさんというか、お節介おじさんというか。ただし、「妾」になることを斡旋。妾も決して不幸ではないのだと説く。 道長は煮え切らないまひろに決断を迫るために、なかばやけっぱちで「源倫子(黒木華)と婚姻する」と宣言。それを聞くまでは「妾になってもいい」とすら思ってはいたものの、こともあろうか、まひろが姫サロンで仲良くしてもらっている、あの左大臣家の、一点の曇りもなき麗しき姫(猫好き)とわかり、瞬時に身を引くまひろ。どんな天変地異が起ころうとも敵わない最強の縁組に、打ちのめされるのだった……。 まひろにフラれた勢いで倫子に夜這いをかけた道長は、あっという間に結婚&出世街道まっしぐら。視聴者が悔しがる暇も与えず、4年の月日が流れていた。姉・詮子(吉田羊)の勧めもあって、道長は天皇家の血筋の明子(瀧内公美)も妾として迎えている。性欲も旺盛、地位も名誉も盤石の立ち位置へ。逆に、まひろは困窮まっしぐらで、女房職を探すも雇われず。窮状を耳にした倫子に憐みで声を掛けられるも、断るまひろの矜持……。 まひろは恋多き女ではない。生涯貫くであろう秘めた思いがあるからこその苦悩が、今後も待ちかまえている。劇中ではまだ描かれていないが、お節介おじさんこと宣孝は、のちにまひろの夫となる男である。賢くて肝が据わったまひろを気に入っている様子は言葉の端々に滲んでいる。この親子ほど年の離れたふたりの、恋愛感情の行方も気になるところだ。 色恋沙汰上等! 道長を巡る女たちとまひろの心理描写は、このあともより深く重く、観る者の心をえぐってくるだろう。女房・紫式部の人間観察力の礎が築かれていく背景をじっくり味わっていきたい。
『光る君へ』 NHK 毎週日曜夜20時00分~ 脚本:大石静 音楽:冬野ユミ 制作統括:内田ゆき 演出:中島由貴、佐々木善春ほか 出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、吉田羊、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則ほか
吉田潮