税務調査官「ダメダメ、それはダメだ」…年金月27万円・享年86歳の元消防署長、溺愛していた“40歳差のひとり娘”へ〈年110万円〉の生前贈与→2年後の税務調査であっさり否認されたワケ【FPの助言】
Aさんの死後、家族の身にふりかかった「まさかの事態」
Aさんが亡くなってから2年ほど経ったある日のこと。83歳になった妻Bさんと48歳のCさんが住む実家に、税務署から連絡がありました。聞けば、「相続税調査を行いたい」といいます。 わけがわからぬまま、BさんとCさんは税務調査を受けることに。その結果、調査官に「この2,310万円の預金は、生前贈与とは認められませんね」と言われてしまったのです。 Cさんはすかさず「これはパパが長い時間をかけて贈与してくれたお金で、贈与税とかがかからないように100なんまん円? とかに収めてくれていたと思います! 遺言書にも、パパが生前贈与したよってことと、通帳の場所がちゃんと書いてあるじゃないですか!」と反論しました。 しかし、調査官は鼻で笑うように「ダメダメ、それはダメだ(笑) 贈与していた通帳、ずっとお父さんが管理してたってことでしょう? それだと、生前贈与として認められないんですよ」と言い放ちました。 結局、Aさんが長いあいだせっせと贈与した2,310万円に対し、加算税を含め約400万円の追徴税が課されることとなったのです。 では、いったいなぜAさんの贈与は認められなかったのでしょうか?
生前贈与の成立に欠かせないポイント
生前贈与のお金は「受け取った側」が管理する必要がある 贈与は、「あげます」「もらいます」という両者の合意が必要です。この点はAさんと娘もできていたのですが、贈与は受贈者(=お金を受け取った人)がそのお金を自分の責任で管理し、いつでも自分の意思でお金を引き出せるようにしなければなりません。 今回の場合、遺言書の内容から、贈与したお金を親のAさんが管理しており、Cさんは贈与されたお金を自由に使える状態になかったことが明らかでした。 さらに、贈与の意思があるという両者の合意も「口約束」であり、贈与契約書など客観的に証明できるものは存在しません。そのような理由から、贈与が認められなかったようでした。
日本で行われている税務調査の実態
国税庁より公表された資料によると、最新の2022事務年度(令和4年7月~令和5年6月)の相続税の実地調査件数は8,196件(前年比129.7%)で、税務調査率は5.4%でした。 2020事務年度以降、新型コロナウイルス流行の影響で税務調査の件数は大幅に減少していましたが、コロナが以前より収束に向かっていたこともあり、前年より増加。コロナ前の相続税の税務調査率(約12%)までには戻っていないものの、今後ますますの増加が見込まれます。 税務調査が入った場合、申告漏れを指摘される割合は約87.6%といわれています。つまり、税務調査は「入られた時点でほぼ確実に追徴税を課される」のです。 税務署は調査対象を選ぶ際、亡くなった人の銀行預金などについて事前に銀行に問い合わせ、口座の動きなどを確認しています。そして、申告漏れを指摘できそうなところを探しだし、重点的に調査を行っているのです。
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