「りりちゃん事件」で捜査のメスが入ったホストクラブの闇 渋井哲也
ホストクラブ経営者らと新宿区の間で連絡会
この内部資料によると、「鎖をかける」は「他店に行けなくする」こと。「俺だけをまっすぐ見てくれるから嬉しい」「他店に行かないから俺も大切にできる」などという「地雷を置く」もまた、女性客を他店に行かせないためのテクニックの一つだ。 例えば「好きな担当がいるのに他店に行く女の子、なんなんだろうね」などと言う。ホストは、さまざまな方法を使って、女性客をマインドコントロールし、高額な利用料金を請求し、支払わせる。支払いができない場合、性風俗店で働かせたり、立ちんぼやSNS売春をさせる。 「こうしたことにはまっていって、女性たちがホストクラブに行って、売り掛けであっという間に100万円になる。18歳や19歳の若年女性が狙われたり、風俗で働かないと払えないほど売り掛けが多額になっていくと。これが悪質ホスト問題ということなんですね」(塩村議員) そうした「悪質ホスト問題」の質問に対して、松村祥史国家公安委員長は「売り掛けそのものについてはホストクラブ以外でも行われていることと承知しています。他方、ホストクラブで背負った借金返済のために女性が売春するなどの事例があることを踏まえると、返済困難な売り掛けをさせることは常識的に考えて問題ではないか」と述べた。この国会で初めて「悪質ホスト問題」が浮上し、対策を取る方向となっていく。 そんな中で、新宿区は、ホストクラブ経営者らとの間で23年12月に連絡会を開いた。その結果、段階的に、24年4月までに売掛金のシステムを自主的に全廃することになった。ホストクラブ側の業界団体は18グループ、新宿・歌舞伎町にあるホストクラブの約7割に相当する220店舗が参加する。親族などの第三者からは取り立てない。 しかし、業界団体でどこまで統制を取れるのか、また、業界団体に入っていない店舗がどうなるのかは未知数だ。しかも、法律で取り締まっているわけではないため、東京都以外、特に大阪にホストクラブが移転し、売掛金システムを維持している、という話もある。現状は、いたちごっこだ。