「りりちゃん事件」で捜査のメスが入ったホストクラブの闇 渋井哲也
塩村あやか議員が国会で質問に立った
筆者は23年10月ごろ、坂本さんに取材していた。ちょうど、大久保公園周辺の立ちんぼ女性に対して、売春防止法違反で取り締まるなど、規制が厳しくなってきた時期だった。 「最近、取り締まりが厳しくなったという話を聞きますね。当事者から『最近、警察多いんだよね』と。それに私も、大久保公園などを回っているのですが、警察らしき人がいるなって、夏ぐらいから思っていました。以前はどこかのタイミングで、2~3カ月に1回、警察がパトロールしていました。最近は、常に見受けます」 この頃は、警察の取り締まりによって逮捕された女性が代理人(国選)を通じて、坂本さんに身元引受人になってほしいとのお願いが複数件、入ってきていた。坂本さんに連絡があるのは、NPO法人の連絡先を記したカードをアウトリーチで配布しているからだ。 「当事者から『また捕まったみたいだよ』という話が入ってきますが、その頻度が増えました。9月と10月は特に多いんです。『◯◯警察署で、今、留置されているんだけど、坂本さんに身元引受人になってもらえないか』という打診も増えています。今までそんなことはなかったので、警察は厳しくなったのかも。小池都知事も動いたというのもあるんでしょうけど」 実は、ホストクラブの売掛金と大久保公園の立ちんぼに関連した問題は、国会でも取り上げられた。 立憲民主党の塩村あやか参議院議員は、23年11月の内閣委員会での質問の中で、「『大久保公園の立ちんぼ、今年80人摘発、4割はホストクラブのツケが動機』という記事(著者注:産経新聞23年10月3日付)があります。売春の現行犯逮捕された女性のうち、4割の理由が、ホストクラブやメンズコンカフェにはまって、売り掛けの返済や遊興費のために売春をしていたという驚愕的な記事です。女性が売春をする目的の多くがホストクラブへのツケの支払いだった」ことを問題視した。 このとき、塩村議員は、ホストの研修資料に関する記事も提示していた。元になったのは「弁護士ドットコム」の記事「悪質ホストの“研修教材”入手、女性を沼らせ『売掛』吊り上げる恐るべきテクニックとは?」(23年11月6日付)だ。それによると、ホストによる被害を受けた女性の保護者を支援する「青少年を守る父母の連絡協議会」の玄秀盛さんが、新人ホストの研修内容を記したノートを入手したという。 それを踏まえた上で、塩村議員は、「(女性客に対する)マインドコントロールのテクニックは、鎖を掛ける、地雷を置くということなんですね。女性は彼氏や旦那程度の男にはお金を出さない。要するにそこら辺の男が演出をする日常レベルでは女性はお金を出さないということ。非日常的演出にお金を出すと。そして、ホストクラブは女性客を姫と呼ぶ。好きな人を押し上げる行為に姫はお金を使う。担当の価値を上げることで自分自身の満たされない心の空洞を埋めることができるというふうに心理的な分析を行って、マインドコントロールをやっていく」と紹介している。