「りりちゃん事件」で捜査のメスが入ったホストクラブの闇 渋井哲也
「売掛金」システムが詐欺事件に発展
こうした「売掛金」システムが、詐欺事件に発展するケースもある。「頂き女子りりちゃん」こと、渡邊真衣被告(26)の事件の場合、ホストクラブの元責任者の橋本一喜被告(35)は、詐欺で得た金だと知りながら、同じホストクラブに勤めていた元ホストの田中裕志被告(27)と共謀し、飲食代として合わせて2850万円を受け取ったとして、組織犯罪処罰法違反に問われている。8月19日、名古屋地裁で開かれた初公判では、橋本被告は「詐欺の被害金とは知らなかった」などと、起訴内容を否認。無罪を主張した。 海外での売春を斡旋(あっせん)する仕組みもある。その仕組みにホストが関係しているかどうか明らかになっていないが、海外で売春する行為を斡旋しているグループがある。その一つのグループは現在、東京地裁で裁判を受けている。 グループの中で3人が職業安定法違反で起訴された。この事件は、海外売春の斡旋グループとして注目されていたものだ。3年間で300人の女性を派遣していた、とも言われている。7月2日に東京地裁で初公判が開かれた。 起訴状や冒頭陳述などによると、グループの3人は「海外出稼ぎシャルム」というサイト(すでに閉鎖)で、海外で売春をする女性を募集し、売春組織に派遣していた。臼井良夫被告(54)はそのグループの代表で、オーストラリアの売春店で店長をしていた。13年からスカウトをしており、オーストラリアやカナダ、アメリカの売春グループのエージェントとして働いていた。 この事件で起訴内容に関連し、紹介を受けた女性は4人。自ら応募してきた女性もいれば、スカウトを通じて紹介された女性もいる。グループのメンバー3人と女性4人は、それぞれ通信アプリでやりとりをし、海外へ出入国する際の注意を受けていた。 田中康博被告(63)は、海外売春紹介の求人サイトを立ち上げた。応募してきた女性を臼井被告に繋ぐ役割をしていた。田中被告は、10年ほど前に、知り合いのスカウトマンから電話で臼井被告を紹介された。「海外の案件を扱っている臼井と申します」と言っていたという。 その後、事件当時の20年ごろ、田中被告はコロナ禍であったために生活が厳しくなり、「仕事を紹介してください」と臼井被告に電話し、22年4月からグループに入る。海外で出稼ぎした女性が多くなっていると知っていたともいう。 また、大原洋介被告(44)は経理担当で、女性やスカウトの報酬計算をしていた。収益の分配率は、臼井被告が考案したものをベースにしていた。大原被告と臼井被告は以前からの知り合いで、臼井被告がホストクラブで働いていた時、大原被告は店のボーイだった。