「りりちゃん事件」で捜査のメスが入ったホストクラブの闇 渋井哲也
「悪質ホストクラブ対策検討会」が発足
ホストクラブを利用する女性客が、高額な料金を請求され、借金(売掛金)を作らされることが社会問題となっている。また、借金返済のために性風俗店を紹介されたり、売春させられることが相次いでいる。そのため、警察庁は法整備を考えるための有識者会議「悪質ホストクラブ対策検討会」を立ち上げた。2024年7月31日、第1回の会議を東京都内で開いた。 会議資料によると、ホストクラブは全国でおよそ1000店舗。このうち東京は30%、大阪は20%を占める。23年1月から24年5月までに、ホスト関連事件で検挙されたのは76件、172人だ。中には、女性客に高額な利用料金を支払わせる「売掛金の返済」のために、売春をさせたケースも含まれている。 近年では、女性客がホストクラブを利用するのは「推し活」の側面がある。つまり、お気に入りのホストの順位を上げるため(=売上を伸ばすため)に、女性客が店内で利用料金を注ぎ込む。いわば、「推しの幸せは私の幸せ」を実現する場の一つになっているのだ。 ただし、利用料金が高額で、手持ちの現金やクレジットカードの限度額での支払いができないことがある。その場合、ホストに対して「借金」をする。ホストは店側に「未回収」を報告する。これが「売掛金」であり、いわゆるツケとなる。 その後、ホストは、女性客に対して、その「売掛金」を請求する。女性客はなんらかの手段によって相当額を用意し、ホストに返済する。女性客がホストに返済できない場合、ホストが女性客に代わって店に相当額を支払うことになる。 こうした「売掛金」の支払いシステム自体は、違法ではない。ただし、返済するプロセスに違法性が付きまとう。 女性客が、返済する売掛金相当額を入手する際、ホストが女性客に性風俗店等を紹介することがある。女性客が性風俗店等で働き、稼いだ額の中から、借金相当額をホストに対して返済する。 その場合、性風俗店等を女性客に紹介したホストは、職業安定法違反に問われる可能性がある。「公衆衛生又は公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」で職業紹介をすることが違法という解釈が成り立っている。 また、パパ活などの個人売春をするように言われたりすることもある。その場合は、女性客が性風俗店等を通さずにする。例えば、マッチングアプリや出会い系サイト、SNS、出会いカフェで、売春の相手を探す。あるいは、新宿区の大久保公園付近などの街頭に立つことになる。いわゆる「立ちんぼ」をする。このとき、売春行為を迫り、立ちんぼをさせられた場合、強要罪の可能性がある。