大坂なおみがWTAファイナルズで挑むものは何か?
年間の獲得ポイント上位8選手が争うWTAファイナルズが、明日21日からシンガポールで開幕。全米オープンを制した大坂なおみ(21、日清食品)が出場する。大坂は、この夏、全米オープンを含めて3大会に出場し、通算戦績は14勝2敗。 当初出場を予定していた武漢オープン、さらに香港大会も欠場したが、それでもWTAファイナルズの出場権を、早々に獲得した。世界ランキングは現時点で、伊達公子が1995年に記録した、日本人最高位に並ぶ4位に到達。先日21歳の誕生日を迎えたばかりの大坂は、目標とする「世界1位」、そして「可能な限り多くのグランドスラムを獲得する選手」への道を、着実に歩みはじめている。 全米オープン優勝の狂熱も冷めやらぬまま出場した、日本開催の東レパンパシフィックオープンで大坂は、日々高まる注視を浴びながらも決勝進出を果たす。 その後のチャイナ・オープンでも、4つの白星を連ねてベスト4まで勝ち上がった。東レの決勝戦では「人生最大級の疲労」を感じて敗れ、地元選手と対戦したチャイナ・オープン準々決勝では、試合中に涙を流すほどに精神的な乱れを見せてもいる。 その一方で集中している時の大坂は、一切のチャンスを与えぬ圧巻の強さで相手を叩きのめし、しかもその頻度は、この一年で急激に高まっている。象徴的だったのは、東レ2回戦の対ドミニカ・チブルコワ戦、あるいはチャイナ・オープン3回戦のユリア・ゲルゲス戦だろう。 正面切っての打ち合いでは敵わぬと悟った相手は、長いラリー戦に持ち込み、大坂のミス誘う作戦に出る。だがフィジカルを大幅に向上させた今の大坂には、その策もそうそう通用しない。むしろラリーを重ねるごとに、球威に押されリスクを強いられるは相手の方だ。いずれも相手に僅か3ゲームしか与えず完勝したこれら2試合は、大坂の選手としての成熟を示す、格好の証と言える。 またグランドスラム初戴冠直後の2大会で、決勝とベスト4に勝ち進んでいることが如何に特殊であるかも、過去の優勝者の足跡と重ね合わせれば明瞭に浮かび上がる。例えば、昨年の全米優勝者であるスローン・スティーブンスは、初のグランドスラムトロフィーを抱いてから2週間後に出場した武漢オープンで初戦敗退。続くチャイナ・オープンでも1回戦で敗れている。 スティーブンスだけではない。今年の全豪オープン優勝者であるキャロライン・ウォズニアッキ、さらに全仏優勝者のシモナ・ハレプはいずれも、優勝後の大会では3回戦(初戦はシード免除)で敗退。ウインブルドンを制したアンジェリーク・ケルバーも、その後に出場したロジャーズカップ・モントリオール大会では1勝もあげられなかった。