大坂なおみがWTAファイナルズで挑むものは何か?
ライバルとの対戦成績は5勝11敗
これら先達の戦績は、グランドスラム優勝がもたらす興奮とそれに続く虚脱感、あるいは高まる注視とそれに伴うプレッシャーに、抗うことの困難さを示している。それを思った時、まだ21歳になったばかりの大坂の適応力と安定感は、特筆に値すると言えるだろう。 もっともそのような能力も、決して一朝一夕に獲得したものではない。今年3月に、グランドスラムに次ぐ格付けの大会であるBNPパリバオープンを制した後の大坂は、やはり激変する周囲の環境に戸惑いを隠せなかったという。 突如として、何年も音信不通だったかつての知人が連絡をしてくる。試合コートには初戦から、多くのファンがつめかけサインや写真を求められた。 「それらの状況を一度経験していたことが、今回の大きな助けになっている」 東レで決勝へと勝ち進んだ時、大坂は、過去の経験が自分を成長させてくれるのだと明言した。 人は一夜にして、突如として別人になる訳ではない。14歳になると同時にプロの大会に出始めた大坂は、まだ21歳ながら既に7年のキャリアを誇る。その中で重ねてきた数多の悔しい敗戦や勝利の喜びから、彼女は常に何かを学び次に続け、世界の上位8選手のみが立てるステージにまで至ったのだ。 客観的な数字だけで見れば、今大会出場8選手との直接対決で大坂は5勝11敗と負け越しており、実は、この数字は、8選手中最も低い。 ただし、東レの決勝で敗れたプリスコワ以外には、全米オープン以降これら8選手との対戦はない。 世界の女子テニス界を牽引すると目される大坂の、現在地はどこなのか? そして今度、どこまで行く可能性を秘めているのか?初出場となるWTAファイナルズは、それを測る格好の試金石でもある。 (文責・内田暁/スポーツライター)