「エモい」「わかる」漫画『スーパーカブ』の魅力! バイクに乗ったこともない中年男性でもハマってしまう5つの理由を語らせてくれ
二輪免許こそない私だけれど、子供の頃から「特攻の拓」や「バリバリ伝説」のようなバイク漫画がとにかく好きだった。学生時代ともなれば、漫画から読み取れた知識だけで「バリバリ伝説の主人公、巨摩 郡みたいにCB750Fで峠を攻めてみたいぜ!」などと友人と話していたほど。今となれば良い(痛い)思い出だ…。 →【画像】カワサキ新型「KLX230 シェルパ」発売日が12/25に決定!! そんな思い出に浸りながら、漫画アプリを見ていたときのこと。かわいらしい女の子と、見覚えのあるバイクが組み合わされた漫画「スーパーカブ」の表紙が目に入った。バイク漫画好きな私だが、「ビジネスバイクがモチーフっておもしろいの?」と最初は侮っていた。 それでも、他にめぼしい漫画もなく、興味本位で読んでいくこと数十分…。「めちゃくちゃ面白いじゃないか!」と絵に描いたような手のひら返しをしている自分がいた。このスーパーカブの面白さは、私のような30代男性はもちろん、その上のバイクブーム直撃世代にも伝わるほどだと確信している。ぜひ、作品の魅力を語らせてほしい!
小説から漫画・アニメに展開した作品「スーパーカブ」
漫画「スーパーカブ」は、トネ・コーケン先生の小説を基にしたメディアミックス作品だ。2021年4月にはTVアニメ化されたため、幅広い層が目にした作品となっている。物語の概要としては、こうだ。 親もいない/友達もいない/趣味もない女子高生の小熊が主人公で、彼女がスーパーカブと出会い、没頭し、友情をも育んでいく青春ストーリー。スーパーカブをきっかけに変化していく小熊の日常が、かわいらしく面白く、そして胸を熱くさせてくれるのだ。
中年のおじさんでもスーパーカブにハマってしまう理由
そんな漫画「スーパーカブ」にハマってしまう理由は、単にバイク漫画として面白いからというだけじゃあない。中年のおじさんだからこそ、ハマってしまう魅力があるのだ。同世代の人であれば、同じように心躍るはず。ここからは、おじさん世代の私が、漫画「スーパーカブ」にハマった理由について熱弁させてくれ! ────────── 登場人物の見た目も性格も、ほどよくかわいい ────────── THEおじさん発言っぽいけれど、まず主人公を含めた全キャラがかわいいのだ。とは言っても、決して「女性」という視点でかわいいのではなく、愛着がもてるかわいさといった感じ。漫画「スーパーカブ」のキャラは、いわゆる美少女や萌えキャラといった描かれ方ではない。強いていえば、どこか「リアル」なのだ。 作品の主要キャラ2人について語るだけでも、その感覚はわかってもらえるハズ。少しばかり冷めた目線で、日常生活を送る小熊。明るくみんなに人気があるものの、その裏で好きなことに熱中したり努力したりする礼子。 子熊の生い立ちはハードだけれど、どちらも深い闇を抱えているわけでもなく、特別にキラキラした生活を送っているわけでもない。ただ、それぞれの”普通”を生きているだけなのだ。単に漫画という視点でいえば、インパクトに欠けるのかもしれない。でも! だからこそ! その姿に好感を持てるのだ。 ────────── 夢中になった”あの頃”を思い出させてくれる ────────── 私のようなおじさん世代になると、「夢中になることがあった学生時代が懐かしい…」なんて感傷に浸ることもしばしば…。そんな”あの頃”を思い出させてくれるのが、まさにこの漫画「スーパーカブ」なのだ。 スーパーカブにハマった小熊の行動力は、物凄く勢いがある。毎日のようにスーパーカブに乗り、夜中にふと徘徊してみたり(第二話「ガス欠」)、スーパーカブに乗って書類を届けるバイトをしてみたり(第六話「クーリエ」)。学校の修学旅行に行く際には、小熊の住んでいる山梨県北杜市から鎌倉までスーパーカブで行ってしまう(第十一話「修学旅行」)。 大人になると、小熊のような行動は「無茶」と見えがちだが、その一方で、どこか懐かしさを感じている自分がいた。きっとそれは、学生時代の自分を思い出すからだろう。 毎日のように趣味に没頭して、学校行事もプライベートも趣味に紐づけて、深夜まで熱中して…と小熊と同じようなことをしていた気がする。子熊に過去の自分を重ねるからこそ、胸が熱くなってしまうのだ。もう一度、今からでも青春してみようとすら思える。 ────────── 自分だけの趣味をもつ喜びと中二病感が懐かしい ────────── 趣味に熱くなれる描写がある半面、リアルなまわりの反応が描かれているのも、心をくすぐるポイントだ。第三話「どこにでもある」の中で、クラスの友人にバイクに乗っていることを伝える描写がある。クラスの友人は「どんなバイクなの?」と一度は興味を持つものの、子熊がスーパーカブだと伝えると一気に彼女たちの興味は冷めてしまう。 小熊は「別にこれでいい、元々目立つの得意じゃないし…」と少しばかり、中二病っぽく塞ぎ込む様子を見せるのだが、この「自分の趣味に共感してもらえない」という歯がゆさと悔しさがとても生々しい。そんななか、礼子の存在が出てきて、共通の趣味を語り合う喜びを感じる姿もある。この姿にとても共感でき、読みながらついつい「わかる~!!!」という言葉が口をついて出てしまったほどだ。 そういえば、私も洋楽ロックを聞いてる自分に酔いしれて、同じ趣味を持つ友人と物凄く語り合ったな…と思い出した。 ────────── 漫画で描かれるスーパーカブの知識がわかりやすい ────────── 女子高生を題材にした漫画は、どんなモチーフを使っていても、恋愛や友情などに走りやすい傾向があるように思う。でも漫画「スーパーカブ」は違う。常にストーリーの軸がスーパーカブであり、さりげなくバイクの知識も教えてくれるのだ! 第二話「ガス欠」で、エンジンがかからないときの対処法を小熊が実践していたり、第十二話「人助け」でチューブ交換をしていたり等、情景や手順を交えてシーンがうまく描かれている。小熊が初心者ということもあり、その視点で説明されているから、とてもわかりやすい! 小難しい専門用語や、長々とした解説もでてこない。「単にバイクの知識が詰め込まれている漫画」でもなく「女子高生が趣味にハマる物語」でもなく「女子高生×スーパーカブ」というコンセプトを見事に表現してくれている! さらに、そうした作業や努力の後、小熊がその時抱いた感情を瑞々しく伝える描写が、とても詩的で魅力的なのだ。たとえば、第二話「ガス欠」で無事に給油をして帰宅した小熊。家に帰ってきた途端に床に寝転がり「身体が沈む。床、ひんやり。ガソリンのにおい。疲れたー…」と幸せを感じる描写がある。 この「大変だったけど幸せを感じる」瞬間の表現が、とても秀逸だ。「なんだか幸せでなんだか満足感がある」という、小熊の言葉を見ていると、スーパーカブのある日々は楽しそうだなと思ってしまう。 ────────── 主人公の成長が微笑ましい ────────── 小熊は物語の開始時点では、両親もいない、友達もいない、地味な女の子だった。そんな子が、スーパーカブを通して、成長していく姿もたまらない。同じ趣味を持つ礼子という友達ができ、バイク屋の人と交流をもつようになり、バイクトラブルで困っている人を助けたり。塞ぎ込んでいたあの頃がウソみたいに、どんどんアクティブになっていく。改めて最初から読み直してみるとギャップに驚くほどだ。 一般的に漫画の主人公には、自分を投影しがちだが、スーパーカブはそれだけじゃない。「そっかそっか、夢中になれるものが見つかって良かったな」、「趣味を通してたくさんの人生経験を積んでいるんだな」といったように、娘を見守るような感覚も覚えてしまうのだ。気づけば、小熊の成長が見たいために、読み進めてしまうこともあるほどだ。