借金50億、懲役370年ーー。「悪あがきして生きのびた」村西とおるが死にたい夜に考えていたこと
「ここから飛び降りるか、焼き場で焼かれるか」借金50億の壮絶
これらの修羅場は、序章に過ぎなかった。クリスタル映像を辞め、ダイヤモンド映像を設立した2年後の1990年、AV界の風雲児は衛星放送事業に着手する。しかし、その試みは大失敗に終わり、借金50億円を抱えてしまう。 人は何かを達成すれば、次なる野望を抱く。だが、向上心は時として己を苦しめる要因にもなる。村西は“欲”の恐ろしさを知った。
「欲を野放しにすると自分自身が振り回されちゃって、自分が自分でなくなってしまう。生きる上で欲は必要ですけれど、どこかで線を引かないといけない。キリがないんですよ。(事業失敗による借金は)勘違い人生の象徴的な出来事ですよ。50億円なんて、すぐ返せると思ってました。一時期は年商100億円ぐらいありましたから。だけどね、大変な思いをしましたよ。目の色を変えて、2年で1500本ぐらいのAVを撮りました。多い時は1日6タイトルをバーッと撮るんだから。その資金で、まずアングラマネーの20億円を返しました。そして2010年代半ば、ようやく全額返済しましたよ」 このころ、自殺の選択も頭に浮かんだという。 「そりゃ思いますよ。もはやこれまでだと。ある人にね、車でダムに連れていかれて、『ここから飛び降りるか、焼き場で焼かれるか。どっちがいい? ダムなら一瞬だぞ』って言われましたよ。でもね、悪あがきして今も生きている。人間の生命力はヤワじゃないですから」
あくまで、億万長者になった成功体験がある村西だからこそ、踏みとどまれたのではないか。 「私たち人間には、あきらめないDNAが刻まれているの。人類の歴史を顧みれば、天変地異を含めて山ほどの問題があった。そんな困難や逆境を克服して、今日があるわけです。あなたと私のDNAをたどれば、王侯貴族もいたけれど、人殺しや詐欺師、ペテン師、娼婦……いろんな人のDNAがミックスされているんです。だから、差別うんぬんと言うこと自体がおかしい。元をたどれば、みんな同じなんですから」