借金50億、懲役370年ーー。「悪あがきして生きのびた」村西とおるが死にたい夜に考えていたこと
死にたくなったら下を見ろ。下の下に俺がいる
いま、苦しみの渦中にいる人へ伝えたいことを聞くと、ことさら熱く語りだす。 「死にたくなった時には下を見ろ。ずっとずっと、ずっと下に俺がいる。だって、前科7犯なんていないよ。借金50億抱えた人だって、そうそういないよ。懲役370年って言われたことないでしょ。女房との営みを何百万もの人にご開帳しているのなんか俺ぐらいだよ。それでも、生きてるんだから。彼氏に嫌われたとか、お金がないとか、体の調子が良くないとかいろいろあるけれど、上を見たらキリがない。それは欲ですよ」
自殺者の主要な原因・動機に『経済・生活問題』があるが、村西はこう考える。 「お金を持っているか否かは、運ですよ。宝くじに当たったようなもの。ソフトバンクの孫正義さん、ユニクロの柳井正さんのようなお金持ちが我々の1万倍の努力をして、1万倍の収入を獲得したんなら尊敬しますよ。でも、他人以上に努力したといっても、せいぜい3倍が限界ですよ。だって、みんな同じ1日24時間なんですから、物理的に無理です。だから、お金を持っている人を尊敬するなんてことは、私の人生ではあり得ないね」 生きていれば、そのうち運が巡ってくることだってある。 「人間は得てして早く成功したいと思うけれど、40歳になっても50歳になっても60歳になっても失敗する。最後に大笑いできればいいじゃないかと申し上げたい。私は92歳ぐらいに最高のハイライトが訪れると考えているんです」
昨今、村西が意気揚々と仕事に向かおうとすると、妨害に遭うという。 「ウチの女房は言いますよ。『あなた、今日もまた出掛けるの? やめてください。あなたが外をウロウロして、ロクなことは一つもないんだから』。私が家を出ていく瞬間にね、ドアの前に立ちふさがって、『行かないで』と」 前科7犯、借金50億円、懲役370年の経歴を考えれば、致し方ないかもしれない。 「ですからね、苦しい時には私のことを考えてください。もうすぐ73歳になるのに、まだパンツ脱いで苦労しているんだ。もし死にたいと思ったら、私のところに来ればいいですよ。山ほど仕事ありますから。四つん這いになって、前から後ろから花火を打ち上げましょう!」
--- 村西とおる(むらにし・とおる) 1948年9月9日生まれ。福島県出身。1984年、黎明期のアダルトビデオ業界に参入。独特のキャラクターからメディアに引っ張りだことなり、登場時の「お待たせしました、お待たせしすぎたかもしれません」は一部で流行語に。現在まで3000本以上のAVを制作。半生が綴られた『全裸監督 村西とおる伝』(太田出版・本橋信宏著)を原作とした『全裸監督(The Naked Director)』が2019年にNetflixでドラマ化され、今年6月からは『全裸監督 シーズン2』が配信されている。最新刊『「全裸監督」の修羅場学』(徳間書店)発売中。