リヴァプール主将の腕章の重み。ジョーダン・ヘンダーソンの葛藤。これまで何度も「僕がいなくても」と考えてきた
「お先真っ暗だ」――外からは、きっとそう見えていた
ここにも僕の矛盾がある。リーダーとして賞賛されるのは心地よくないのに、いつもリーダーでありたいと願ってきたし、またその資質もあった。イングランドのU-21でも、サンダーランドのユースチームでも主将を務めていた。どこにいても、僕はリーダーとしての素質があると認められてきた。 僕はいつも、すべてをきちんとしようとした。サッカーを愛し、正しい生きかたをしてきた。だからその点では模範となることができた。ピッチの上では、いつもリーダーでありたかったが、主将だからといって特別なことはしたくなかった。求めたのは仲間たちが揺るぎなく結びついていることだ。チームメイトたちが僕を見て、「俺たちはキャプテンを信頼してる。俺たちは彼のために死んだってかまわないし、彼は俺たちのために死をもいとわない」と思うような絆で結ばれたチームを作りたかった。そんなリーダーになろうと思ってずっとやってきた。 リヴァプールの主将に任命されたとき、告知は控えめにしてほしいとお願いした。動画はなしで、短いコメントと数枚の写真だけにするようクラブに伝えた。そのころ、主将交代があったクラブはよく、街に出て派手な告知用の動画を撮影し、ソーシャルメディア・チャンネルに投稿していたが、それはまったく僕らしくなかった。そんなことは真っ平だったし、考えるだけでも嫌だった。スティーヴィーが去ってしまったという事実を受けとめるだけでもファンにとっては大きなことなのに、僕が彼の後を引き継ぐのを騒ぎたてることなどできなかった。 外からはどう見えるかということはわかっていた。おそらくはリヴァプール史上最高の主将であり、過去最高の選手のひとりであるスティーヴン・ジェラードから、主将がジョーダン・ヘンダーソンに変わる。「どうなってしまうんだろう」と、人々は言うだろう。「お先真っ暗だ」――外からは、きっとそう見えているだろう。自分では、チームをまとめるだけの力はあると感じていたが、誰もが不安だったはずだ。最初は、キャプテンの腕章をつけると少し居心地が悪く、落ち着かなかった。