自衛隊が60年以上行っている「共同訓練」とは?
共同訓練の意義とは?
共同訓練を行うことで、安全保障にかかわる様々な課題に協力して対応できる関係を相手国との間に育むことができます。なぜなら、訓練では意志疎通を図りつつ、人員や装備を活用して課題に取り組むという、人道支援から戦闘行動まで、あらゆる活動に共通する要素を確認することができるからです。 例えば、東日本大震災の時、オーストラリアは発災から3日後には軍の大型輸送機を日本に派遣し、被災地に向かう陸上自衛隊を空輸するなど、支援活動を行いました。こうした連携を日豪が短期間で実現できた一因は、共同訓練を通じて一緒に活動するための環境を徐々に整えてきたからです。ちなみに、豪州海軍の資料によれば、日本とオーストラリアは潜水艦への対応を想定した訓練等の事実上の共同訓練を、1981年から行っています。
共同訓練における今後の課題とは?
日本が約60年前に始めた共同訓練は、時代と共にあり様を変え、多様な訓練を通じ、幅広い事態に協力して対応できる基盤を諸外国との間で育んできました。ただし、防衛上も外交上も意義のある共同訓練には、国内法による限界もあります。例えば、お互いにお互いを守るような事態、つまり、集団的自衛権の行使を前提とする訓練は、これまで行うことができませんでした。日本は憲法解釈上、集団的自衛権を行使しないという立場をとってきたからです。 しかし、日本を取り巻く安全保障環境は大きく変化しました。今では、海賊や民兵による脅威はもちろん、北朝鮮の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾し、中国の公船が日本の領海へ侵入を繰り返すようになっています。日本が今後、地域の平和と安定のために諸外国との共同訓練を活用していこうとするならば、現行法の実効性を高めるとともに、国内法の根底にある理想と日々生じている現実とのギャップを、国民一人一人の良識と努力によって、丁寧に埋めていくことが求められます。
廣瀬泰輔(日本国際問題研究所・若手客員研究員) 廣瀬泰輔(ひろせ・たいすけ)。元米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員。日本財団国際フェローシップ(2期)。EU短期招聘訪問プログラム(EUVP、2015年)。防衛大学校卒。松下政経塾卒。国会議員秘書。