自衛隊が60年以上行っている「共同訓練」とは?
日本はいつから、どのような共同訓練を行っているのか?
1955年、日本は他国との訓練を始めましたが、そのあり様は時代と共に変化してきました。最初の共同訓練は、海上自衛隊と米海軍が行った、海の地雷である機雷を除去する「掃海(そうかい)訓練」です。 冷戦中の日本は、ソビエト連邦(当時)の潜水艦などの軍事的脅威を念頭に置いた訓練を同盟国である米国と行っていました。一方、冷戦後は、信頼醸成や共通の課題に取り組むために、米国以外の国とも共同訓練を行うようになりました。1998年、日本がロシアと始めた捜索・救難共同訓練はその象徴です。 その後、海賊やテロなど多様化する安全保障上の課題に諸外国と協力して対応するため、自衛隊はフィリピンやトルコなど域内外の国々と共同訓練を行うようになりました。この間、訓練の形態も多様化し、日米の2国間で行う訓練の他、日米豪などの3国間や、多国間での訓練も行われるようになりました。 2007年、日本が主催し、シンガポールやイギリスなど7カ国の参加を得て、不審船舶への立入検査の要領などを演練した「(大量破壊兵器等の)拡散に対する安全保障構想(PSI)」に関する訓練は、多国間訓練の一例です。共同訓練は時代の変化と共に、隊員の技量向上に留まらず、外交的意義も含んだ、多義的な活動へと変化してきたのです。
共同訓練ではどのような訓練をしているのか?
共同訓練の内容は幅広く、基礎的なものから実戦的なものまで多岐にわたります。共同訓練に関して自衛隊の中で一番長い歴史をもつ海上自衛隊が行っている訓練を例に挙げると、最も基礎的な訓練の一つは「信号・通信訓練」です。通信訓練では、暗号などを共有した上で、商船も使用する旗などを活用して意志疎通を図ります(図1参照)。意志疎通が図れるようになると、一緒に行動する上で不可欠な実務的訓練を行います。海の上で集合し、合図に従って行動する「戦術運動訓練」(図2参照)はその一例です。
更に段階が進むと、各種の活動に従事できるよう、より難易度が高い実務的訓練を行います。海の上を移動しながら船から船へ燃料を補給する「洋上給油訓練」(図3参照)はその代表例です。安全保障上の利益を共有するなど、相手国との関係が更に深まると、軍事的脅威を念頭に置いた実戦的訓練も行うようになります。敵のミサイル等に対処するための「対空戦訓練」はその一例です(図4参照)。