2023年 上場企業の監査法人異動は264社 監査法人の合併による異動が83社に大幅増
市場別 東証スタンダードが129社で最多
市場別では、「東証スタンダード」が129社(構成比48.8%)で最も多かった。次いで、「東証グロース」が65社(同24.6%)、「東証プライム」が61社(同23.1%)、と続く。 2018年から2021年までの旧市場では旧東証1部の最多が続いていたが、2022年に続き2023年も「東証スタンダード」が最多だった。 ◇ ◇ ◇ 公認会計士・監査審査会が2023年7月に発表した「令和5年版モニタリングレポート」によると、2023年3月末で監査法人数は280法人で、監査法人数は増加傾向が続いている。 ただ、所属する常勤公認会計士数は、25人未満の中小法人が全体の90%超を占めている。 監査期間の長期化、監査報酬の見直しなどで、大手監査法人から準大手・中小の監査法人に変更する上場会社も増えている。それだけに、監査の担い手としての中小規模の監査法人の重要性が高まっている。だが、ここ数年、複数の中小監査法人への業務改善命令などの処分が相次ぎ、監査の品質の維持・向上が喫緊の課題となっている。こうした事態を受け、公認会計士・監査審査会では中小監査法人に対する検査をより重視する運用方針を打ち出している。 上場企業は、2013年の約3,400社から2023年末で約3,800社と、10年間で約400社増えている。だが、企業数が増える中で、依然として不適切会計が判明する上場企業は後を絶たない。企業側にコンプライアンス(法令遵守)意識の徹底が求められると同時に、監査法人にも厳格な監査体制の確立が求められている。急激な物価高、人手不足などで業績不振に直面し、不適切会計を行う企業が増えるリスクも高まっており、監査法人の重要性は増している。 監査法人は、監査工数が増加し、会計士の人数確保を迫られている。その一方で、若い会計士を中心に、業務の多忙化や待遇面に不満を抱えて一般企業に移る会計士も目立つ。 2023年12月、PwC Japan有限責任監査法人の合併など、監査法人業界では大型再編が注目されている。だが、地道な人材確保に向けた業界環境の改善もまた、大きなうねりになっている。