「ミャクミャク」になぜ「様」が付いたのか? 研究者に聞くキャラとしての魅力とは
日本人が好きな「目で表現する」キャラクター
3人の研究者の見解には、それぞれうなずけるものがあります。おそらくは、このキャラには敬称が似合うと誰かが考え、多くの人が共感したからこそ広まったのだろう、と筆者は考えます。こうした現象を生み出したミャクミャクというキャラの魅力はどこにあるのでしょうか。 「日本人が好きな『目で表現する』キャラクターであること、円を多用して作られていること、それからきれいな原色を使っていることにあります」と答えるのは、嵯峨美術大学芸術学部でキャラクターデザイン論などを教えている安斎レオ教授です。 「目で表現する」とはどういうことか。「米国のキャラクターは、ミッキーマウスのように口角がクッと上がっているのが特徴で、鼻から口の表情を読み取るんですが、日本の場合はキティちゃんのように目がメインで鼻と口はおまけなんです。日本は元々多神教の国で、よくわからないものでも目が2個付いてればとりあえずキャラクターであり、神様であると認識するんですね」
ミャクミャクには「嫌われる要素がない」
また、「円を多用するのは古典的な手法であり、ウォルト・ディズニーや藤子不二雄も同じように円のような単純な形からキャラクターを発想している」と指摘。色も、中間色ではなくて赤と青といった原色系の色を使うことで、視力が悪くなってきた高齢者でもきれいに見えやすいといいます。 「だから、嫌われる要素がないんですよ。見た目のキッチュ(俗悪)さを指摘する人も結構いますが、あの程度であれば、少なくとも手塚治虫や藤子不二雄などの漫画を経験してきた30~50代なら、抵抗感なく受け入れる人も多いでしょう」 ただ、このようなデザインに決まった背景には、東京五輪公式エンブレムの盗作疑惑騒動も影を落としている可能性がある、と安斎教授は見ています。 「こういう(国際的な大型イベントの)キャラが発表されると、必ずと言っていいほどパクリ騒動が起きやすい。今回はそれを避けるために、あえて謎の生き物というカテゴリーから選ぶことにしたのではないでしょうか」