「ミャクミャク」になぜ「様」が付いたのか? 研究者に聞くキャラとしての魅力とは
尊敬して持ち上げつつ、ネタ化
関西大学社会学部の松下慶太教授(インターネット・コミュニケーション)は、「SNSの中でも、ミャクミャクに関する投稿が多いのはツイッターで、TikTokやインスタグラムではそれほど多くありません。ツイッターはネタ化しやすいプラットフォームで、ミャクミャクはツイッター的なキャラと言えそうです」と分析します。 では、なぜ「様」がつけられたのか。松下教授は「誰が『様』をつけ始めたのかたどるのは難しいんですが、関西人は割と『様』をつけがちですよね。(元阪神タイガースの)バース『様』とか。この『様』には、尊敬して持ち上げる一方で、ネタ化しているような意味合いが込められているように感じます。ミャクミャクの『様』についても、ある種の不気味さ、アマビエと同じような畏怖の念も込められている一方で、ネタ的なところもあるように思います。今回も誰かがネタ化するために『様』をつけたのかもしれませんね」と見ています。
日本人の神観念と関西文化が相まって
立教大学社会学部の小池靖教授(宗教社会学)は「まだ仮説にすぎませんが」と断った上で「日本の妖怪的な神観念という意識と接合し、さらにビリケン『さん』と呼ぶような文化とも相まって、ミャクミャクにも尊称の最上位である『様』をつけるようになったのではないでしょうか」との見解を示します。 「日本の妖怪的な神観念」とは何か。小池教授は、「東アジア文化には、鬼神(きしん)と呼ばれる中国由来の神観念がありまして。鬼神は基本的に死者の霊を指しますが、時に神様、時に妖怪という意味でも使われることがあります。日本人には、こうした恐れ多いものに思わず手を合わせてしまいがちなところがあるんです」と説明します。 「神様、仏様、ご先祖様など、『様』は宗教的文脈では実によく使われていますし、他にも皇室など敬意を持って接しなければならない人には『様』をつけます。ツイッターで『神として祀られていそう』『ミャクミャク様じゃ』といった表現が使われているのを見ると、投稿者側のそういった意識の現れじゃないかなと思います。また、関西ではビリケンという神様にビリケン『さん』と敬称をつけて呼ぶ人がいますが、そうした文化も多少は『様』付けに影響しているかもしれません」