猪木ーアリ戦 40年目の公開検証試合が伝えたものとは?
新感覚の格闘技イベント『巌流島 WAY OF THE SAMURAI 公開検証Final』が31日、東京の有明コロシアムで開催され、総合格闘家(プロレスリングと表記)の田村潔司(46、日本)と、元プロボクサーのエルヴィス・モヨ(32、ジンバブエ)が、40年前に行われたアントニオ猪木対モハメッド・アリ戦の異種格闘技戦を公開検証する試合を3分×5ラウンドの特別ルールで行った。田村が、5ラウンド32秒、壮絶なTKO負けをして病院送りになる凄惨な試合となった。公式発表は2595人で、観客席の半分程度しか埋まらなかった有明に異様な空気が流れた。 ギリギリ前日に決まった特別ルールは、40年前にも、試合の直前まで揉めに揉めた猪木ーアリ戦のルールにほぼ倣ったもの。プロレス側はリングシューズに素手。ボクサー側は10オンスのグローブ着用で、下半身へのキック、タックルは禁止、寝技も制限時間30秒に封じられ、田村側はグラウンドでの打撃も禁止(モヨ側はOK)。プロレスラーにとっては、攻撃の選択肢が極めて少ないルールである。 40年前は、そのがんじがらめのルール中で、猪木氏は抜け道を探して、マットに寝た状態からキックを繰り出す、通称「アリキック」と言われた奇策で対峙。結局、ほとんどの時間を寝て戦うことになり、試合は15ラウンドを戦い抜きドローとなったが、「世紀の大凡戦」と、メディアの非難を受けた。 田村は、序盤、アリキックに頼らずにスタンディングから、ゆっくりと左にサークリングをしながらミドル、ハイのキックを主体に戦ったが、ダメージを与えることができず、逆に右ストレートを浴びて最初のダウン。素手では、ガードもままならず、許されている掌底も当たらない。3ラウンドには状況を打破できずに焦ったのか、ルール違反のタックルを仕掛けようとして躊躇。逆に右のダブルを浴びて場外に逃げるシーンも。4ラウンドには、ついに苦しまぎれに寝た状態からのアリキックを見舞い、いわゆる「猪木ーアリ状態」を再現することになったが、逆に2度ダウンを奪われ、5ラウンドにはマットに腰を下ろしパンチを避けることができない状況で、左フックを打たれ、その後、パウンドを浴びせられてレフェリーに「動かないと止めるぞ」と警告されたが、四つんばいの状態から動くことができず、レフェリーが試合を止めた。 3月の巌流島大会で、顔面を3箇所も骨折、完治していなかった田村へのダメージは、通常以上に激しいこともあって、顔面を腫らした田村は、インタビューに応じることもできずに病院へ直行した。