戸惑う乗降扉に立ち入り禁止の先頭座席、でも床下からは聞き覚えのある音色が… アメリカで日本にはない韓国メーカー製電車に乗ってみた「鉄道なにコレ!?」【第56回】
韓国の自動車大手、現代自動車は2022年に日本の乗用車市場に約12年ぶりに再参入したが、韓国メーカー製の電車は日本には走っていない。これに対し、アメリカでは韓国の鉄道車両メーカー、現代ロテムが製造した電車が活躍している。乗り込もうとすると独特な乗降扉に戸惑い、期待した先頭車両の展望席には行く手を阻むものが…。ただ、走り出すと床下からは〝聞き覚えのある〟走行機器の音が響いた―。(共同通信=大塚圭一郎) 中学受験シーズン到来、鉄道ファンには実はチャンス問題が多い?(前編) 地理、環境問題、計算問題…取り上げられやすい理由とは
【現代ロテム】鉄道車両や防衛機器などを製造する韓国のメーカー。自動車大手の現代自動車・起亜のグループ会社となっている。1999年に当時の現代精工、大宇重工業、韓進重工業の鉄道車両製造部門が統合して設立された。2001年に現代自動車・起亜自動車(現起亜)のグループに入り、07年に現社名の「現代ロテム」となった。韓国の高速鉄道「KTX」用の電車を含め、韓国で使われている幅広い鉄道車両を製造。外国案件の獲得にも力を入れており、これまでにアメリカ東部フィラデルフィアと西部デンバーの都市圏で走る通勤用電車、西部ロサンゼルス都市圏向けの通勤用客車、カナダ西部バンクーバーの無人運転電車「スカイトレイン」の路線「カナダライン」で走っている車両などを納入した。 ▽通勤用電車の〝面持ち〟の「シルバーライナー5」 アメリカ東部ペンシルベニア州フィラデルフィア。アメリカの独立宣言が公布された1776年に鳴らされた鐘「自由の鐘」があることで知られる。公共交通機関を運行している南東ペンシルベニア交通局(SEPTA)の郊外鉄道で最も新しい車両が、現代ロテムが製造した2010年登場の車両「シルバーライナー5」だ。
切り立ったような先頭部は中央に貫通扉を設け、通勤用電車なのを体現した〝面持ち〟だ。銀色をしたステンレス製の車体には青色と赤色の帯をまとっている。 SEPTAは120両を発注した。現代ロテムは量産車を韓国・釜山の工場で製造した上で、ペンシルベニア州の工場で最終的に組み立てた。SEPTA関係者は地元での最終組み立てによって「地域に雇用がもたらされた」と豪語する。 ▽なぜここに柱を?早くも入り口で戸惑う フィラデルフィア中心部から近郊へ向かった際、プラットホームに到着したのがシルバーライナー5だった。ところが、早くも入り口で「どちらから乗ればいいのか」と戸惑った。 なぜなら乗降口が独特だったからだ。2枚の扉が反対方向へ開く「両開き扉」なのは日本の通勤用電車の多くと共通しているが、扉の間を柱で区切っていたのだ。このため左側の扉から入るべきか、それとも右側の扉から入るべきかと一瞬、迷ってしまった。