戸惑う乗降扉に立ち入り禁止の先頭座席、でも床下からは聞き覚えのある音色が… アメリカで日本にはない韓国メーカー製電車に乗ってみた「鉄道なにコレ!?」【第56回】
皮肉だったのは、乗客の立ち入りを禁じた「かぶりつき」席に運転士のかばんが置かれていたことだ。運転席は貫通扉を挟んだ片側だけのスペースで手狭なため、運転士が荷物置き場に使っていたのだ。 それならば先頭部全体を乗務員室にした方が良かったのではないか。車内には切符の検札や扉の開閉をする車掌も乗り込んでいるため、かばんを座席に放置しておいても心配はないのかもしれない。しかし、壁で仕切られた乗務員室内に保管したほうがより安心だろう。 ▽聞き覚えのある音、床下機器はもしや… 電車はスムーズに発進した。床下から聞こえる機器の音を聞く限り、モーター(主電動機)に流す電力を適切に調整する制御装置「インバーター」と、モーターが快調に駆動している。実はそれらの音色には聞き覚えがあり、「もしや日本のあのメーカーの製品ではないか」と推理した。 とはいえ、メーカー関係者からは「韓国メーカーは自国企業の製品を優先して使う」と聞いたことがある。半信半疑ながらも関連サイトを調べたところ、推理は当たっていた。
シルバーライナー5は、三菱電機が製造したVVVFインバーターとモーターを搭載していたのだ。三菱電機製のインバーターとモーターは日本国内に限らず、米国を含めて海外の幅広い電車にも採用されている。 ▽日韓関係にとって模範的な〝ハーモニー〟 韓国メーカーの電車に乗っても日本メーカーの製品に感心したのは、聞き覚えがある音色で安心感を覚えたからなのか、それとも日本人だからなのかは定かではない。 ただ、国籍を問わずに優れた製品を採用することで、顧客が満足する最終製品を納入するのは当然の流れだ。例えば日本のソニーグループの有機ELテレビも「有機ELパネルはともに韓国のサムスン電子グループ、またはLG電子グループから調達している」(業界関係者)というのが実情だ。 反日姿勢が目立った韓国の文在寅(ムン・ジェイン)前大統領のもとで悪化していた日韓関係は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の就任後に改善に向かっており、経済を含めた幅広い連携強化策が検討されている。