【“紀州のドン・ファン”事件裁判ルポ②】検察側の切り札!?「老人 完全犯罪」「覚醒剤 過剰摂取」検索履歴を裁判員はどう判断するのか
■須藤被告「未解決事件やサイコパス事件とかそういうのが好きで調べていた」
検索履歴の中で特に注目すべきポイントは須藤被告が覚醒剤を注文したとされる2018年4月7日の受け取り前に、「覚醒剤 過剰摂取」「覚醒剤 死亡」と検索していたことです。 この検索履歴について須藤被告は、11月15日第21回公判の検察側の質問に対して、こう答えています。 (検察官)「『覚醒剤 過剰摂取』と調べていますがなぜ?」 (須藤被告)「密売人に覚醒剤の注文をしたあとで、覚醒剤に関する動画を再生したら、ユーチューブから検索ワードをお勧めされて見ました」 (検察官)「過剰摂取とはどいういう意味だと?」 (須藤被告)「いっぱい摂取という意味だと思います。(検索で)ひっかかったので調べました」 (検察官)「『覚醒剤 死亡』については?」 (須藤被告)「芸能人の動画だったと思いますが、覚醒剤をたくさん摂取して路上で死んだという話があり、死んでしまうんだと思って調べました」 それ以外にも別の日に「完全犯罪」と調べた理由について「未解決事件や猟奇殺人、サイコパス事件とかそういうのが好きで調べていた」と説明し、「老人 死亡」「老人 完全犯罪」については「直前に老人ホームで3人が転落死して、殺害を認めた男のインタビュー動画を見たのが影響して検索しています」と証言しています。実際に検索や閲覧の履歴には、そういった事件についてのバラエティー番組などが多く含まれていたこともわかっています。確かに、事件やホラーの動画が好きな人の検索履歴から恣意的に検索ワードを選んだら、あたかも殺人事件を計画しているかのように見える可能性はあるかもしれません。
■「検索履歴」をどう捉えるべきなのか?
11月18日の論告で検察側は「事件前は猟奇殺人ではなくもっぱら完全犯罪や薬物の検索。『完全犯罪』『老人』『覚醒剤』『遺産相続』に関する検索を繰り返しており、単なる興味本位で検索しただけとは到底考えられない」と指摘しています。 最終弁論で弁護側は「検索魔の須藤被告が覚醒剤の飲ませ方を調べた検索履歴がありません。そのまま飲ませる、液体に溶かす、カプセル等に入れて飲ませる。追い詰められて殺すしかないとされていた被告に検索履歴がないなんてありえるでしょうか?」と疑問を投げかけました。 このYouTubeの検索履歴をどう捉えるべきなのでしょうか。 判決は12月12日の午後1時40分から。野崎さん殺害の直接的な証拠がない中、裁判員はどう判断するのか注目されます。 次回は最大のポイントといえる「直接証拠なし」。須藤被告が間違いなく犯人であるという検察の主張について解説します。
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