GEジャパン岡野社長「2025年もタイトな状況」航空機需要は旺盛もサプライチェーン問題続く
新型コロナによるダメージから急回復する航空業界。世界の航空会社などが加盟するIATA(国際航空運送協会)は、今年は世界全体の航空収入が初めて1兆ドルを突破し、旅客数も52億人と初の50億人台に達して年間フライトは4000万回へ拡大すると予測しており、新型コロナ後の「通常の成長パターン」へ戻りつつあると2025年を位置づけている。 【写真】GEエンジンを積む777Xの飛行試験機 一方、輸送力を増強したい航空会社に対し、機体の引き渡しはボーイングの品質問題に加え、サプライチェーンの混乱が今年も影響を与え続けると予測されている。航空機を製造する上で、機体メーカーに加えてエンジンメーカーは不可欠な存在。GEエアロスペースジャパン社長で、北アジアパシフィック地区統括ゼネラルマネジャーの岡野克也氏に、今年の見通しを聞いた。 「非常に苦労している。エアフレーマー(機体メーカー)も、エンジンメーカーも苦労しており、GEも例外ではない」と、サプライチェーンの課題について岡野社長は語る。「コロナで一気に需要が減り、供給も絞った。メカニックも含めて業界から離れてしまった」と、減産に転じたことや航空業界に対する将来的な不安から、経験豊富な人を含めてエンジン生産に携わる人が離れてしまい、戻りきっていない影響が今も続いているという。 GEエアロスペースは、ボーイング787型向けのエンジンGEnx-1Bや、747-8向けのGEnx-2B、次世代大型機777X向けGE9X、現行の777向けGE90、747-400や767など向けCF6、エンブラエル190/195(E190/E195)など向けCF34などを製造。仏サフランとの合弁会社CFMインターナショナルは、エアバスA320neoファミリーやボーイング737 MAXなどに採用されている新型エンジン「LEAP」や、A320ceoや737NG向けCFM56を手掛けている。また、A380向けには米プラット&ホイットニー(PW)との合弁会社エンジンアライアンス製GP7200がある。 「日本のエアラインの方とお話をしていても、ディマンド(需要)は非常に強い。国際線のキャパシティーを増やしたいが、航空機の発注を前倒ししようにもエアフレーマーの納入スピードが上がってこない。業界全体として厳しい状況が続いており、エンジンも例外ではない」として、機体に対する需要は旺盛なものの、供給が追いついていない。 航空機用エンジンで用いる原材料は、エンジンメーカーが異なっても、条件をクリアできるサプライヤーが限られるため、同じ企業から供給を受けるケースが多い。「一気に需要が上がってしまうと、ローマテリアル(原材料)の取り合いになってくるので、影響が出ている」としつつも、「GEが納入遅延の原因にならないようにしており、我々が原因の遅延は起きていない」と述べ、アフターサービスもパーツ供給やオーバーホールといったサービスは安定供給できているという。 今後の見通しについては、「2025年に回復するかというと、タイトな状況が続くだろう。2-3年のスパンで時間が必要ではないか」と述べた。 GEは事業分割を2024年4月に完了。旧GEは航空機エンジン事業を中核とするGEエアロスペースとして存続し、エネルギー部門を「GEベルノバ」、医療機器部門を「GEヘルスケア・テクノロジーズ」に分社化している。
Tadayuki YOSHIKAWA