生まれながらの起業家が「大人たちの正論」に聞く耳を持たない納得のワケ
成功事例を真似ることそのものは否定しません。しかし、「うまくいったやり方だから、うまくいく」というのは、思考停止というか、循環論法です。まず、先の成功事例とは、時期が違います。商材も違うでしょう。人材も違います。何から何まで違うのです。まれに、大ヒット商品を生み出したチームをまるごと引き抜いてくるという話がありますが、それで成功した話は聞きません。 ● 日本のトップ企業は どんなふうに真似たか 万が一うまくいっても、それは結局、二番煎じであり、先行事例以上の成功は見込みにくくなります。 「いや、後追いのほうがうまくいったケースがあるよ」 たとえば、高度経済成長期の日本は西欧諸国のビジネスを真似て、成功した事例です。トヨタ自動車だってフォードを真似ました。松下電器だって、東芝だって、GEを真似ました。でも、ただ真似たわけではなかった。 「これじゃだめなんじゃない?」 「もっと品質を上げられるね」 「もっとコストダウンできるな」 「もっとこうしたほうがいい製品になる」 こんな思想を持って、真似ていたのです。いわば、すでに世界的な企業になっていた欧米企業の「失敗」を見つけ出していたのです。「学ぶ(まなぶ)」の語源は「真似ぶ(まねぶ)」という説があります。 世界のTOYOTAが、もはやビジネススクールで教えないことがないくらい、浸透させた言葉に「KAIZEN」があります。もちろん、これは「改善」です。常に(成功や失敗から)学び続け、いつもいまよりも良くしていく。continuous improvementと英訳されます。優れたものを真似るだけではなく、いかに自社の強みを生かして、KAIZENし続けるか、進化し続けるかが勝負です。
山川恭弘