新型「パッソ」はトヨタとダイハツの未来を指し示す“事件”
複雑に分かれる小型車マーケット
さて、パッソ/ブーンのセグメントは? と聞かれるとちょっと難しい。時にサブBセグメントと分類されたり、Aセグメントに分類されたり、Bセグメントに分類されたりする。分かりづらいのだ。 それはこのクラスのグローバルスタンダードがまだはっきりと確立・共有されてないからだ。つまり成功事例が知れ渡って、その結果、各社が新規参入してセグメントが生まれるという自然なクラス形成に至ってないのだ。 自然なクラス形成について、一番分かりやすい例はゴルフだ。現在のCセグメントは、1974年にデビューした初代ゴルフが大ヒットしたことにより、二匹目の泥鰌(どじょう)を狙った世界中の自動車メーカーが、ゴルフの対抗馬を送り出したことで形成された。本来セグメントはそうやって出来ていくものだ。 ではなぜ、このパッソ/ブーンのクラスで基準となるヒット作が出て来ないのかと言えば、それはグローバルで見た時に、小型車はマーケットごとに求められる機能や性格が大きく異なり、しっかり「像」を結ばないからだ。常に混沌の最中にあると言って良いだろう。クルマというのは不思議なもので、最も高級なクルマと最も庶民的なクルマにその国の国民性が表れやすい。まずはこのパッソ/ブーンのクラスについての事情をマーケットごとに実例を挙げながら検証してみよう。 例えば、ヴィッツの属する「先進国用Bセグメント」は先進国の多くで「小さいクルマ」を代表するクラスになっている。フィットとデミオ(ガソリン)ははっきりこの仲間になる。実用上の4人乗りも含めた多様な用途をこなせるマルチパーパス性を備えた最小クラスになるのだ。先進国マーケットでは、小型車といえども、あまりに貧乏感が漂うのは成立しない。内外装の意匠は、先進国の水準で一定の高級感が求められる。高級感は言い過ぎだとしても、少なくともあまりに低級な品質は忌避される。価格が極端に安いことよりも、比較的安価でありつつ内容的に寂しくないことが重要なのだ。具体的に言えば150万円ラインだ。 この先進国用Bセグメントの周辺には「むしろ高くてもいいから小さいボディサイズで、もっと見栄えのするヤツを」という需要もある。それがプレミアムAとプレミアムBセグメントで、フィアット500やBMWのミニ、アウディA1あたりは、先進国富裕層にターゲットを絞った小型車となっている。凝ったメカニズムでプレミアム性を上げた日本らしい例で言えば、ハイブリッドのアクアとデミオのディーゼルモデルがここに該当するだろう。いずれにしても、価格が通常のBセグメントと明らかに違い、その価格差に相当するだけの付加価値が乗っているクラスだ。概ね200万円がラインになる。