彬子女王殿下に辛酸なめ子さんがインタビュー! 能登の復興支援や日本文化を子どもたちに伝える「心游舎」への熱い思いとは?
女性皇族として初めて博士号を取得し、『赤と青のガウン オックスフォード留学記』が、30万部以上のベストセラーとなっている三笠宮家の彬子女王殿下。皇室ファンとして20年以上、ほぼ毎年一般参賀に参加するコラムニストの辛酸なめ子さんが、彬子女王殿下にインタビュー。能登の漆芸文化を支援するクラウドファンディングを立ち上げた経緯から、日本の伝統文化を子どもたちに伝える「心游舎」の活動まで、多岐にわたり話を聞いた。 【写真】能登の漆芸文化を支援するクラウドファンディングを立ち上げた、彬子女王殿下 ◇彬子女王殿下 1981年寬仁親王殿下の第一女子として誕生。学習院大学を卒業後、英国オックスフォード大学へ留学。日本美術を専攻し、海外に流出した日本美術の調査・研究を行う。2010年には女性皇族初となる博士号を取得。現在は一般社団法人「心游舎」にて、子どもたちに日本文化を教えるための活動を行なっている。著書に『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP文庫)、『日本美のこころ』『日本美のこころ 最後の職人ものがたり』(ともに小学館)、『新装版 京都 ものがたりの道』(毎日新聞出版)などがある。現在、和樂にて『京ことば都がたり』、和樂webにて『彬子女王殿下と知る日本文化入門』を連載中。 ◇辛酸なめ子 漫画家、コラムニスト。1974年東京都生まれ、埼玉県育ち。武蔵野美術大学短期大学部卒業。著書に『辛酸なめ子の現代社会学』(幻冬舎)、『女子校礼讃』(中央公論新社)、『辛酸なめ子の独断!流行大全』(中央公論新社)、『辛酸なめ子、スピ旅に出る』(産業編集センター)、『無心セラピー』(双葉社)、『電車のおじさん』(小学館)、『大人のマナー術』(光文社新書)、『川柳で追体験江戸時代 女の一生』(三樹書房)などがある。
■能登の漆芸文化を支援する、クラウドファンディングを立ち上げた理由 辛酸なめ子(以下辛酸) 最初に、クラウドファンディング「能登半島地震復興祈念『漆能』プロジェクト 漆芸文化の記憶と技を次世代に伝えるために」を始めたきっかけについて教えてください。 彬子女王殿下(以下彬子さま) もともとの企画自体は震災の前からあったものです。漆の文化について伝える新作の能を作りたいというお話を漆芸作家の若宮隆志さんから相談されたのがきっかけです。当初はオブザーバー的に参加をしていたのですが、制作をするにあたって物語のベースとなる漆についての歌を詠んで欲しいとプロジェクトのメンバーから依頼をいただき、あれよあれよという間に巻き込まれていった感じです。制作が進んで、公演の準備を進めていた矢先に、2024年1月1日に能登で震災が起こりました。輪島の被害が甚大で、「漆能」のプロジェクトも続けられないのではないか、と考えたこともありました。けれども、こういった機会だからこそ、漆の文化をたくさんの方に理解していただき、能登の現状を知っていただくためにも続けなければならないと思いました。それにはやはり、クラウドファンディングという形が一番ふさわしいのではないかという結論に至り、活動が再スタートしました。おかげさまで、クラウドファンディングは、開始から2日で目標額を達成。寄付金は「漆能」の制作を通し、漆芸職人の支援や漆芸文化を次世代に伝えるための活動に使わせていただきます。 辛酸 能登地方では、9月に記録的豪雨が発生しました。復興の最中に大きな被害に見舞われて心配です。 彬子さま 復興がなかなか進まない中での豪雨被害で、気力が失せてしまったと言っておられる方も多く、何とお声をかけたらよいのかと言葉が見つかりません。一日も早くおだやかな日常が戻ることを願うばかりです。 辛酸 クラウドファンディングを立ち上げられた皇室の方というのは、他に聞いたことがありません。オックスフォード大学に留学して博士号を取得されたのも女性皇族初でいらして、パイオニアとして道を切り開いていらっしゃいます。 彬子さま 実は他にも「皇族初」があります。御柱祭で柱を引っ張ったり、オンライン配信をしたりしたのもおそらく私が初めてです。あと、街歩きロケもいたしました。 辛酸 「皇室のスポークスマン」でいらした寬仁親王殿下のスピリットを受け継いでいらっしゃるようです。そしてすごく行動力がおありです。 彬子さま その時々に一番いいのではないかと思うことをやってきただけなので、行動力があるという実感はあまりないかもしれません。 辛酸 漆について、叙情的で心に訴える二首の和歌を詠まれました。普段和歌を作るのに慣れていらっしゃるから、すっと思い浮かばれるのでしょうか? 彬子さま 月次(つきなみ)の詠進歌(えいしんか)(※)がありますので、同世代の方と比べると、和歌に接する機会はあると思います。漆にまつわる和歌とのことでしたので、あれこれ悩みはしましたが、実際に輪島に足を運んで体験したことを思い出しながら「伝えたいことは何かな?」と、自分の中で模索しながら考えました。 ※宮中で開かれる毎月の歌会のこと。