ペップが「これがレアル・マドリー。これがベルナベウ」と語る意味…衝撃を与えた“極上の戦い”
サンティアゴ・ベルナベウでの熱戦
レアル・マドリーは、チャンピオンズリーグ準々決勝1stレグでマンチェスター・シティと3-3で引き分けた。サンティアゴ・ベルナベウで取材する日本人記者が“極上の戦い”を紐解く。 【ゴール動画】まさに“極上の戦い”!ゴラッソ連発の大一番 取材・文=江間慎一郎
極上の戦い
ここはレアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウ、地下2階にある記者会見場だ。今しがたチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグ、マドリー対マンチェスター・シティが終わったばかりで、壇上ではジョゼップ・グアルディオラが流暢な英語を駆使して興奮気味に語っている。 「非常に面白い試合だった。2チームとも攻撃を仕掛け、この大会に威厳を与えた。私たちはリードを得たが、同点に追いつかれてしまった。これがフットボールだ。これがレアル・マドリーなんだ。これがベルナベウなんだよ」 ペップの言う通り、非常に見応えのある一戦だった。今回の入場チケットの値段は最も安い席で88ユーロ(約1万4500円)、最も高くて445ユーロ(約7万円)に設定されていたが(気が遠くなる額のVIPゾーンは除いて)、その購入者は期待を優に上回る、極上の戦いを目に焼き付けたはずである。
レアル・マドリーのサプライズ
試合の序盤はカオスだった。シティはキックオフから2分後、ベルナルド・シウバの壁の外側を狙った意表を突くフリーキックで先制に成功。だが、あまりにあっさり点を決めた彼らは、何をすべきか迷ったように後方に引いてしまい、マドリーがその機に乗じている。マドリーは12分、エドゥアルド・カマヴィンガのミドルがルベン・ディアスのオウンゴールを誘発し、14分にはヴィニシウス・ジュニオールのスルーパスからロドリゴがペナルティーエリア内左に侵入してネットを揺らした。先制点が決まってから10分後、わずか2分間の内に逆転は果たされている。 「マドリーについて驚いたこと? ロドリゴを左サイド、ヴィニシウスを中央で起用したことだ。彼らは凄まじく速い」 ペップがそう振り返ったように、カルロ・アンチェロッティはこの試合でサプライズを用意していた。ロドリゴとヴィニシウスの左サイドでの併用である。ヴィニシウス不在時にロドリゴが左サイドでどれだけ輝こうとも、ヴィニがいれば彼に左サイドを任せてロドリゴを右で使ってきたイタリア人指揮官だが、今回は中盤に(右から)フェデ・バルベルデ、カマヴィンガ、トニ・クロース、ロドリゴ、前線にジュード・ベリンガム、ヴィニシウスを並べる4-4-2を採用。これが見事にはまっている。 左サイドで連係するロドリゴとヴィニシウスは、2点目の場面が象徴するように、マドリーのトランジションからの攻撃力を大幅に引き上げている。シティがこのブラジル人コンビをどれだけ警戒しようと、彼らのスピードとテクニックは抑え切れるものではなかった(カイル・ウォーカー不在ならなおさらで、マヌエル・アカンジでは歯が立たなかった)。スペインメディアはこれまで「ロドリゴとヴィニシウスを同時に輝かせるために“左サイドが二つあれば”どんなに素晴らしいか……」などと報じてきたが、この一戦はこれ以上ない解を見ているようだった。 また、アンチェロッティが今回使用した4-4-2システムは、守備面でも大きな効果を発揮している。四角形での守備ブロック構築はシティの中央からの攻撃を跳ね返すとともに、両サイドバックの攻撃参加を阻害することに役立っていた。胃腸炎でケヴィン・デ・ブライネも欠いたシティの攻撃は本来のレベルからかけ離れたものとなり(とりわけロドリが精彩を欠き続けていた)、ボールを簡単に奪われては、ロドリゴ&ヴィニシウスを起点とするマドリーのカウンターの餌食となっている。