ソフィア・コッポラ最新映画『プリシラ』とシャネルが手がけたウエディングドレス、その製作に迫る。
話題の最新映画『プリシラ』。ソフィア・コッポラが監督を務めたこの作品の劇中に登場するウエディングドレスをシャネルが手掛けている。 「自分の映画のプレミアに、ヴィルジニー・ヴィアールが手掛けたオートクチュールのドレスを着て行くと大きな自信をもらえます。かつてガブリエル・シャネルは、服は自信を与えるものでもあると言っていましたし、シャネルのドレスを着ていると、無敵になったように思えるのです」そう語るのは、映画監督でありシャネルのアンバサダーでもあるソフィア・コッポラ。 これまで、ショーのバックステージを撮影したり、ティザーフィルムを製作したりとメゾンと強い繋がりのもと、コラボレーションを続けてきたソフィア。そんな彼女がシャネルのサポートを受けて撮影した最新作映画は、かつてエルヴィス・プレスリーの伴侶として、その激動の人生を駆け抜けた女性、プリシラ・ボーリューの人生が描かれている。大人になる過程でのアイデンティティと自立を求める姿を映し出したストーリーは、2023年9月にヴェネツィア国際映画祭でプレミア上映され、大いに注目を集めたことも記憶に新しい。
ソフィアからの依頼を受け、劇中のエルヴィスとの結婚式で、プリシラが着用するウエディングドレスやクラウンを制作したシャネル。ドレスは、1967年の結婚式で実際にプリシラが着用したものに新たな解釈を加えた特別なデザイン。2020年春夏オートクチュールコレクションのエスプリが着想源にもなっており、ヴィルジニーのクリエーションとシャネルが誇るオートクチュール、さらにメティエダールのアトリエのクラフトマンシップを凝縮し完成させた一着だ。
「結婚式のシーンはとても象徴的で、これまで私たちは、その瞬間をたくさんの写真や映像で見てきました。その瞬間はプリシラの物語の頂点とも言えます。そのために、映画でもこの重要な場面に相応しいウエディングドレスを作る必要がありました。シャネルを提案してくれたのは衣装デザイナーのステイシー・バダット。私とメゾンとの親交もあり、ドレスの制作を手伝ってもらえるようお願いできたのは大変喜ばしいことでした。シャネルは、自身が得意とする美しいレースをあしらったオートクチュールのウエディングドレスを作ってくれたのです。これは自分たちだけでは到底できないことでした。ウェディングドレスとマサロが手掛けたシューズが、シャネルのスタジオやアトリエの人たちと一緒に登場したときは、胸が高鳴りました。心から感謝しています」(ソフィア・コッポラ) 遡ること1930年、ガブリエル・シャネルは、映画プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンが製作する映画の衣装をデザインするためにハリウッド入りする。以来、メゾンは、ガブリエルが生前に築いたつながりを存続させるべく、映画監督や組織へのサポートを継続。映画はメゾンにとっても切っても切れない存在となっている。