フェイクニュース批判のトランプ政権から相次ぐ「誤報」発信
アメリカのトランプ政権とメディアの対立は終わりを迎えるどころか、さらに激しさを増している。既存メディアが名指しで攻撃されたり、記者会見から締め出されたりする前代未聞の事態が続く一方で、トランプ政権が発信した「誤報」はついに3桁に到達した。 【写真】目立つワンマンぶり “トランプ革命”読み解く今後の注目点は
会見から一部メディアを締め出し
「フェイクニュースを流すメディア(経営不振に直面しているニューヨークタイムズ、NBC、ABC、CBS、CNN)は私の敵ではない。こういったメディアはアメリカ国民の敵なのだ!」
トランプ大統領は2月17日の午後、国内の主要メディアを名指しで攻撃するツイートを行った。これまでもツイートの内容に批判が少なくなかったトランプ大統領だが、主要メディアを名指しで「国民の敵」と呼んだことに対しては、市民だけではなく、一部の議員からも批判の声が上がっている。共和党の重鎮として知られるマケイン上院議員は、19日にNBCの報道番組に出演。その中で、「民主主義を守りたいと思うのならば、報道の自由、多くの場合は反対の考えを持つメディアの存在を受け入れなくてはいけない」と語った。また、自由な報道が失われることで、「個人の自由も失われ、結果的に独裁者が誕生してしまう」と警鐘を鳴らしている。 同じ日、マティス国防長官も訪問先のアラブ首長国連邦で、記者団に対し、トランプ大統領が特定のメディアを「国民の敵」と呼んだことについて、「メディアとはこれからも付き合いを続けて行かなければならないし、個人的には彼らと何の問題もない」とコメント。メディアとの付き合い方で、トランプ大統領の考え方に同意しない姿勢を見せた。 トランプ政権のメディアに対する攻撃はさらに続く。24日にホワイトハウスで行われたギャグル(カメラなしの記者会見)では、以前からトランプ大統領が名指しで批判を続けてきたメディアが会見への出席を禁止された。 会見から締め出されたメディアは、CNN、ニューヨークタイムズ、ロサンゼルスタイムズ、バズフィードなど10社近くで、BBCやガーディアンといった英メディアも締め出しの対象となった。CBSやNBCは締め出しの対象にならなかったものの、AP通信の記者はホワイトハウスによる特定のメディアの会見締め出しに抗議する目的で会見への出席を取りやめた。CNNのニュース番組でアンカーをつとめるジェイク・タッパー氏はトランプ政権のやり方を傲慢だと番組内で批判し、「(特定のメディアを会見場から締め出すという)このような考え方は、一言で言えば、非アメリカ的なものです」と視聴者に訴えた。 一部のメディアを標的にした会見締め出しを実施したトランプ政権に批判が集まる中、トランプ大統領は2月25日にホワイトハウス記者会が主催する夕食会に出席しない意向をツイッターで表明した。 この夕食会は今年は4月29日に予定されているが、例年はホワイトハウスを担当する記者だけではなく、政治家や企業経営者、ハリウッド俳優らも出席。政権とメディアの関係が悪化していても、この夜だけは「無礼講」で、会場では多くのジョークが飛び交う。2006年の夕食会では政治風刺で人気を博すコメディアンのスティーブン・コルベアが舞台上で行った政権を風刺するスタンダップコメディに、当時のブッシュ政権の高官らが激怒し、数名が夕食会を途中で退席する一幕も。 夕食会は1921年から続いており、大統領が参加しなかったケースはレーガン政権時の1981年のみで、当時のレーガン大統領は夕食会直前の3月30日にワシントン市内で暗殺未遂に遭い、胸部に被弾している。1963年11月にはケネディ大統領がテキサス州ダラスで暗殺されたが、翌年に行われた夕食会には大統領に昇格したリンドン・ジョンソンが出席した。