フェイクニュース批判のトランプ政権から相次ぐ「誤報」発信
「極右」バノン主席戦略官の存在
意図的なのか否かは不明だが、「誤報」を発信し続けるトランプ政権。メディアとの深刻な対立も、歴代政権では見られなかった光景だ。トランプ政権のメディアに対する攻撃を批判する声は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領からも上がっている。ブッシュ氏は27日に放送されたNBCテレビのインタビューの中で、「独立したメディアが私のような人間に説明責任を果たさせることが必要だ。権力には依存症があり、腐敗していくこともある」と、トランプ大統領のメディア攻撃に疑問を呈している。ブッシュ氏には対テロ戦争やイラク戦争をめぐって、メディアから激しく追及された過去がある。 トランプ政権で大きな影響力を持つとされる、主席戦略官のスティーブン・バノン氏は保守系ニュースサイトの「ブライトバート・ニュース」の会長を務め、昨年の米大統領選挙では選対本部長としてトランプ陣営をコントロールしていた人物だ。バノン氏の経歴などに関しては改めて書きたいと思うが、ブライトバートは昨年の大統領選期間中もオバマ政権やヒラリー・クリントン候補に対するネガティブ・キャンペーンを続け、トランプ支持者を増やす原動力になったともされる。 2015年8月にはバズフィードが「ブライトバートはトランプ氏に好意的な記事を書き、その見返りに金銭の提供を受けている」というブライトバートのスタッフの談話を紹介している。バノン氏は昨年8月にマザー・ジョーンズ誌に掲載された記事の中で、「ブライトバートはオルタナ右翼のためのプラットフォーム」とコメントしており、バノン氏が極右思想を持つアメリカ人の代弁者的存在だと指摘するメディアも少なくない。トランプ政権による情報発信の仕方や既存メディア叩きに大きな影響力を持つとされるバノン氏の動向には、今後さらに注目したいと思う。
------------------------------ ■仲野博文(なかの・ひろふみ) ジャーナリスト。1975年生まれ。アメリカの大学院でジャーナリズムを学んでいた2001年に同時多発テロを経験し、卒業後そのまま現地で報道の仕事に就く。10年近い海外滞在経験を活かして、欧米を中心とする海外ニュースの取材や解説を行う。ウェブサイト