フェイクニュース批判のトランプ政権から相次ぐ「誤報」発信
「スウェーデンで昨夜、何が起こったか?」
「ニセの情報を発信する」として、アメリカ国内外のメディアに対する批判をやめないトランプ大統領だが、トランプ政権から発信される情報に明らかな誤報が少なくないのも事実だ。米ハフィントンポストは、トランプ政権発足後の1月21日から2月24日までの間にトランプ大統領や大統領の側近が発信した情報で、「誤報」であったものが100個に達したと2月26日に伝えている。 英語では「ミスインフォメーション」と「ディスインフォメーション」という2種類の言葉が存在し、前者は文字通りの「誤報」というニュアンスだが、後者は「何らかの目的で意図的に作られたニセ情報」というニュアンスがある。トランプ大統領や政権関係者から発信された「誤報」の多くが、ディスインフォメーションと指摘されている。 最初の「誤報」が出たのは1月21日。大統領就任式に集まった観衆の数を聞かれたスパイサー報道官は「集まった人々の数は、過去最大規模となった」と発言。同じ日にトランプ大統領も「100万人以上が大統領就任式を見るために集まってくれた」と主張したが、のちにメディアの検証によってこれらの主張が正しくなかったことが証明されている。 100個目の「誤報」が出たのは2月24日で、「インテルなどの複数の米企業が、私が選挙で当選確実になったと判断して、アメリカ国内における投資を開始した」と保守系団体が主催する集会で発言したが、アメリカ国内におけるインテルの新規投資は選挙前にすでに決定されていたことが判明している。 トランプ大統領の発言が、他国を混乱させる一幕もあった。2月18日にフロリダ州で支持者を前にして行った演説の中で、トランプ大統領がヨーロッパ諸国について言及する場面があった。 「我々はこの国を安全にしなくてはいけません。ドイツで何が起こっているのかを見てください。スウェーデンで昨夜、何が起こったのかを見てください。スウェーデンですよ。ブリュッセルで起こっていることに目を向けてください。世界中で起こっていることにも目を向けてください。ニースを見てください。パリを見てください」 トランプ大統領は「テロ」という言葉を直接使うことはなかったが、ニースやパリ、ブリュッセルは過去2年の間に大きなテロ事件が発生した場所であり、ドイツでも昨年末にベルリンで発生したテロ事件は世界に大きな衝撃を与えた。文脈からテロを容易に連想させることは明らかではあるが、「昨晩スウェーデンで起こったこと」という発言に多くの人が困惑した。2月17日にスウェーデンでテロ事件は発生しておらず、ネット上では多くのスウェーデン人が17日の普段の町の様子を撮影した写真をSNSなどにアップして、トランプ大統領の発言を揶揄した。 2月17日はFOXニュースが、難民の受け入れに寛容なスウェーデンで犯罪やテロの脅威が高まっているという現地レポートを放送しており、トランプ大統領がこれに影響されてスウェーデンに言及したのではないかという説が強まっている。トランプ大統領は20日にも、大量の移民・難民の受け入れを実施しているスウェーデンの治安悪化が取り上げられていないとメディアを批判した。しかし、スウェーデン政府は23日にウェブサイトで、難民や移民の増加によって治安が悪化しているという主張にデータを用いて反論。実際にはスウェーデンの犯罪発生率は過去20年にわたって減少傾向にあり、スウェーデン国内のテロ事件は2010年のテロ未遂が最後であった。