センバツ2019 戦力分析/下 少ない好機、着実に 競争で新戦力台頭 /福井
<第91回選抜高校野球> 「分かってるのか。ふるいにかけられているんだぞ」。薄暮の迫る啓新の人工芝グラウンドで2月下旬、植松照智監督が選手たちに大声で発破をかけた。 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ふるいとは、レギュラー争いを意味する。昨年4月の就任以降、植松監督はチーム内に競争の意識を植え付けた。主力と控えは区別なく全員が同じ練習に取り組む。「チャンスは平等」。高まったチームの士気は、やがて打撃面の新戦力を台頭させることになる。 身長185センチ、体重85キロ。堂々たる体格を誇る鈴木聖矢選手(2年)が4番の打順を任されたのは、今月上旬に徳島県阿南市であった練習試合だった。秋の公式戦は代打が主な役どころだったが元々の長打力に加え、状況に応じたバッティングを心がける対応力に成長が見られたという。 練習試合で、鈴木選手は好機に長打を放つなど躍動した。「追い込まれた後、いかに粘れるかが大事。低めの球の見極めがまだまだです」と自身の課題を見つめるが、伸びた選手にチャンスを与える植松采配の好例となった。 同じ試合では、秋の大会でベンチ外だった阪上啓悟選手(2年)も先発メンバーに名を連ねた。競争の中で磨いたスイングがライナー性の安打を生み、チーム内にまた一つ良い緊張感をもたらした。 初戦で相対する桐蔭学園(神奈川)はエース左腕の伊礼海斗選手(2年)を軸に、直球に威力がある右腕の長谷川颯選手(2年)ら5投手がそろう。対策は練りづらいが、もとより啓新は打ち勝つタイプのチームではない。秋の公式戦のチーム打率はセンバツ出場32校中30位の2割8分7厘で、本塁打も1本のみの数字が示している。 逆もまた真なら、ロースコアで僅差の試合を勝ってきた経験が啓新の強みとも言える。出塁率に優れた濱中陽秀選手(2年)や幸鉢悠樹選手(1年)らを塁に置き、鈴木選手や穴水芳喜主将(2年)の主軸で還す基本戦略に変化はなく、植松監督が言う「最少失点に抑えて少ない好機をものにする」展開に持ち込めるかが鍵となる。 啓新は第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第5日の27日、第3試合で桐蔭学園との初戦に挑む。春夏を通じた初めての甲子園で、選手たちは持ち前の粘り強さを発揮できるのか。期待を添えて注目したい。=この企画は塚本恒が担当しました。