農産物輸出大国タイで見た日本のコメ輸出の現実 日本産は高くても売れるのか?「日本食ブーム」に乗るために必要なこと
「東南アジア諸国連合(ASEAN)の新興国では、日本のコメなどの農産物は高品質なので高くても売れる」と良く言われる。本当にそうだろうか? タイなど農業国では、日本コシヒカリなど日本の品種が現地生産されており、バンコクのスーパーなどの米売り場を席巻しているようだ。その現場を取材した。
着実にタイの市場に入っている〝日本のコメ〟
タイの首都バンコクでは、5年前にオープンしたアイコンサイアムを含め、大型のショッピングモールの建設が相次いでいる。そこには、日系のデパートやスーパーマーケットが入ることが多い。在留邦人約8万人を狙ったものである。 フジスーパーやドンドンドンキなど日系スーパーでよく見かけたのはタイ産日本米である。その代表格が「のりたけ米」だ。 名古屋市のコメ流通会社、名古屋食糧の現地法人であるRICE CREATION(THAILAND)(則竹祐哉社長)が販売している。残留農薬ゼロを謳った米が在留邦人を中心に「日本人が栽培していて安全なお米」(日本人バイヤー談)として、人気があるようだ。 実際に筆者が購入したのが、2キログラム(㎏)の無洗米で、139バーツ(約570円、レート2024年1月現在)とかなり安価。タイの友人に頼んで焚いてもらったが、日本産米に比べると少しパサつき感はあるものの、十分にコメの味を楽しむことができる。 また、日本食レストランの塩サバ定食は1000円以下という価格設定にもかかわらず、これも満足感が高い。タイで生産されたものでも一定の品質を保つことができていると言えるだろう。
実はタイは「農業大国」
タイは、農産物輸出大国として知られている。たとえばコメの輸出量は、1位のインド、2位のベトナムに次いで、世界第3位である(農水省ホームページ)。 タイの農産物の強みは「価格」だ。労働者の最低賃金は1日1500円ほどと、円安の影響があっても日本よりかなり安価である。外務省によると、タイは日本の約1.4倍の国土を誇るにもかかわらず、人口は6609万人と日本よりも少ない。広大な大地で、安価な労働力による農産物の生産ができるのだ。 つまり、タイは輸出する品目によるものの、輸出ターゲットとしてはシンガポールのように農産物をほぼ生産していない国に比べ、難易度ややり方も大きく異なることがすぐわかる。しかし、人口が集中するバンコクは急速な発展を遂げて、所得が上がっており、日本農産物の輸出ターゲットとなりつつある。